【銀魂】沖田隊長、約束をしましょう【沖田総悟】

一番、知っている　沖田side ページ3

…ただただ、俺が怖がっているだけなのだ。俺だけが怖がって、先に進めないでいる。この先に待ち構えているものは逃れようのないもので、けれど、Aをそこに連れてくることをしなかったなら、俺が恐れる最悪な結末は回避することが出来る。俺は、そんな考えに甘えているのだろう。傷付けたくないのなら。危険な目に合わせたくないのなら。失いたくないのなら、その理由を摘んでしまえばいい。そうなる前に、止まってしまえばいい。俺は今までそうやってAを遠ざけて、護っていたのだ。いや、Aを護っていたわけではない。Aを傷付けたくない、俺自身を護っていたのだ。Aの俺を見据える真っ直ぐな目に知らないふりをして、俺は逃げていたのだ。

…傷付けたくないのなら。失いたくないのなら。遠ざけてしまえばいい。だが、本当にそれでいいのか。それですべてが解決するのか。そんなものは、単なる俺のエゴじゃないか。そんな自問自答が、また頭の中を駆け回る。同じようなことを馬鹿みたいに繰り返して、結局また、同じような答えにもなっていない所に着地して、またそこから葛藤する。とても不毛だ。


Aはもう覚悟を決めているのに。俺ばかりが何も決められないでいる。俺が、Aの足を引っ張っている。その事実に、俺は奥歯を噛み締めた。


「…そう、時間はねェぞ」

「…分かってやすよ、んなことは」


…討ち入りまで、一週間もないのだ。早く何かを決めなければ。何かしらの覚悟を固めなければならないのだということは、分かっている。

…傷付けたくないから、失いたくないから、Aの意思を無視するのか。

…その意思を受け入れて、同じ戦場にAを立たせるのか。


…思考は巡る。目が回る。頭痛がしてくる。


「…どうすりゃ、いいんですかねィ」


力なく、俺はまたさっきと同じようなことを呟いていた。本当に、どうすればいいのか。どっちが正しいのか、分からない。上司として。部下を信じなければならない者としてのやるべきことは、理解しているのだけれど。その理解を越えて、どうしたって感情が邪魔をしてくる。不安や恐れや恐怖が、俺の身体にまとわりつく。

自分の足元を睨み付けるようにして見下ろしていれば、


「…アイツは、大丈夫だ」


と、土方さんは言った。


「…Aは、強い。それはお前も知ってるだろう」

「……」


…頷くこともなく、返事をすることもなく、俺は土方さんを見据えた。

知っている。そんなこと、俺がきっと一番知っているはずなんだ。

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