終わらない物語 (ページ32)

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赫の過去ページ32

「お前能力者だろ。近づくな」
「え、手から火が出る？…気持ち悪い」

うるさいな

「あいつってさ、この村に来る前村一個全焼させたらしいぞ」
「あいつ怒らせたら燃やされるって」

ありもしない噂を流して

馬鹿どもが

俺はあんな馬鹿なんて相手にしない
要するに、人間なんて相手にしない
それでも悲しくない
馬鹿を相手してても疲れるだけだ

人間なんて脳がない馬鹿だ

違うか

相手にしない
『相手にされない』
悲しくない
『悲しいことを言葉で紛らわす』
疲れる
『俺を相手するから』

俺もとことん馬鹿だな

そんな俺にも一人だけ話してくれる奴がいた

能力者の「神子」
美しい白髪に紫の目
俺と同じく村で迫害されていた

「赫！おはよ！」
「うわ、馬鹿が来た」
「私、み・こ！」

正直こいつのことが好きだ

でも俺は素直になれないから

いつも、神子を苛めてしまう

素直になりたいけど

何度も夢見た。神子にもし告白したら？
一緒に逃げられる？この狂った村から
そうなるなら、一緒に逃げたい

でも神子には村から出たくない理由があった

神子の、お母さんが眠っている村だから

神子を守るために死んでしまった、神子のお母さん

俺は神子のお母さんの代わりに神子を守るって決めたんだ

そんなある日、俺たちを夜襲が襲った

神子は自分の能力の全てを出して戦った

それでも無理だったんだ

そして、神子は殺された

その瞬間、俺の暴走が始まった

気が付いた時には辺りは血の海で、周りの肉塊は元に形があったのかと疑うほどだ

「え、これは…俺が？」

信じられなかった

でも、自分の血に染まった手を見て自分がやったのだと確信した

俺は逃げた
村から目を背けるように
俺の足元で息絶えている血で赤く染まった白い綺麗な髪を見ないように

気がつくと、俺はどこかの居間に寝ていた

「あ、起きた！おばさーん！男の子起きたよー！」

家の入り口に立っている女の子

逆光で照らされたその姿を見ることはできなかった

「私はA！よろしくね！」

家に入ってきて俺に手を差し出したそいつ

神子と瓜二つ、いや、神子だった

違うのは、黒髪ということ

「能力者なんだ。能力は「複写」！」

「俺は、赫…」

名前は教えた。まぁ、よろしくするつもりなんてこれっぽっちもない

神子を思い出すから、こいつとは話したくなかった

でも明らかに神子とは性格が違う

そんなところに好いて行った

そして、俺は「A」が好きになって行った