織田作の面影 -伍-

佰玖拾伍 ページ36

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予感と思われた、空想の中の足音は

現実となって、私の鼓膜に振動を与えた。




『……』


私は目を伏せ、異能を解除した。



久作君に動物を見せ始めて、あれから数分間、久作君の為に動物を創り出していた私だが

久作君は、急に消えた動物に疑問を抱いた。



夢野「え、もう終わり……？

Aお姉さんは悪い事したから、ずっと此処に囚われているんでしょ？」

『ううん、終わりだよ』

夢野「……じゃあ、また遊んでよ！

約束、約束……してよ」

『私は、出来もしない約束が出来る程の器は持ってない

そんなもの、残酷な程に胸にこびり付くだけだよ』

夢野「え……」


……林さんだって、“また来る、約束”

絶対に最期、そう云ったんだ。


そうでなければ、この子は真っ直ぐ信じて待ってる筈が無い。




＿＿＿＿＿“Aも徐々、十六歳か

咖喱、作ってやる。

誕生日プレゼントは……何が良い？”




『……作兄が良い。』


作兄が……変わらず生きている事が……




「……A」

『……』

「此方向け、A」

『……え、中也……？』

「今から手前を逃がす

さっさとポートマフィアから出るんだ。」


顔を上げれば、帽子の影で顔がよく見えない

けれど、間違い無く中也だった。



『……ま、待ってよ

私を……逃がすの？』

中原「ああ」


中也は静かに檻の錠に手を掛け

三秒もしない内に、カチャリ……と冷たい音を立てた。



中原「さっさとしろ」

『だから待ってって、状況が判らない』


私は立ち上がって、開いた扉に近付かず

檻越しに中也に近付いた。



中原「上に内緒で逃がす

俺の勝手な判断だ、次の巡回迄あまり時間は無ェから

疾くしろッて……」

『そんなの、中也は如何なるの！？』

中原「俺か？

俺は何も無い」

『……え？

組織の裏切り者を逃がしたら、中也だって裏切り者になるんだよ？』

中原「ならねえよ、其れなりの理由も根拠も有る

首領は、割と懐がでけえし
部下の事情なんざ小さいものなんだよ」

『……嘘』

中原「嘘じゃない、俺は絶対に裏切り者扱いされない

不安なら指切りげんまん……するか？」



其れこそ、判らないよ

絶対に？


そう、云い切れるの？



二度目の約束が……こんなものになるのなら

私は受け入れられない。









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