アイツなんか大嫌い【矢巾秀】続編

66.私の一番 ページ16

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体育館の扉を開けると、矢巾が一人でサーブを打っていた。
すぐにこちらに気付き、手を止める。



「…どうしたの？」

「あ…練習中にごめんね。終わってからでいいから」

「…あと30本で終わらせる」



やっぱり、バレーをしている時は本当に真剣で別人みたい…。
邪魔しちゃいけないと思いつつ、つい目を奪われる。
結局、打ち終わるまでずっと矢巾のサーブを黙って見ていた。



「今日は部活休みで誰もいないから、ついて来いよ」



そう言って部室まで連れて行かれる。



「いいの、部外者が入って」

「俺が主将だから俺がいいって言ったらいいんだよ！」



バレー部の部室は、男子が使ってると思えないくらい綺麗だった。



「今日は、ごめんな。またお前に迷惑かけた」



らしくない、落ち込んだ声。



「別にいいんだよ…もう2人の喧嘩には慣れた」



笑って返すと



「Aって本当にいい奴だな」



私のほうを、振り返る。



「Aがいい奴だってこと、ずっと知ってたけど…知ってたつもりだったけど…俺、いろんなことに気付いてなかった」



いつになく、真剣な表情。



「ずっと過去に縛られ続けてて、Aがずっと好きでいてくれたことも、俺自身の今の気持ちもなかなか気付けなかった。
本当は、ミスター青城になって、ステージからAを呼びたかったんだ。
Aに、カッコいいところ見せたかったけど…
結局あんなことになったし、やっぱり俺かっこ悪いな」



少し笑顔が戻った矢巾に、私は言った。



「さっき言いたかったの、言いかけて言えなかったけどね。
私にとってはミスター青城は矢巾だよ。矢巾が一番…」



最後まで言いたかったのに…



「俺はAのことが好きだ」



また、言葉を遮られたんだ。

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