兄様、私もまた兄様に珈琲を淹れたいです ページ16
→たっぷりと場を沈黙させてから、太宰は云った。
太宰「喉渇くよね。」
広津「何か買ってこさせます。」
広津は傍らの部下に指で動くよう命じた。構成員の一人が慌てて駆け出す。
太宰「ミルク多めの珈琲。うんと冷やして。」
駆けていく黒服の背中に、太宰は明るく告げた。
太宰「あ、でも氷無しでね。カフェイン抜きがあればそれでいいな。砂糖は倍で頼むよ!」
冷や汗をかきながら指示を復唱しつつ去っていく黒服を見たまま、太宰はぽつりと云った。
太宰「本当はAが淹れてくれる珈琲が飲みたいのだけどねぇ。ああ広津さん、今回奴等が襲ったのは唯の武器庫じゃない。ポートマフィアの非常用武装を保管する、三つの最高保管室のうちの一つだ。警備も厳重だし、許可のないものが近くに寄っただけで警報が鳴るようになっている。敵はそれを易々と無効化し、しかも正規の暗証番号で中に侵入している。この番号は準幹部級の人間しか知らない。敵はどうやってそんな最高機密情報を手に入れたんだろうね?」
広津の表情が強ばった。考えられるのは、内部の人間を拷問して吐かせたか、何らかの異能力で情報を抜き出したか、あるいはマフィア内に裏切り者の内通者が居るかだ。
どれが真実だとしても、導き出される結果は最悪だ。
太宰「この一帯は会戦地になるよ。そこら中で火柱があがる。赤く焼け焦げた空が見えるようだ。」
広津「敵組織の情報は判らぬのですが。」
広津が感情を殺した声で訊ねた。
太宰「うちの部下が、昨日の捕虜を拷問して情報を吐かせようとしたのだけど、巧くいかなかった。一瞬の隙をついて、奥歯に仕込んだ毒を呷って自害したのだよ。ただ一言聞き出せたのは、敵の組織の名前。」
太宰は次の言葉が持つ意味を象徴するように、鋭い目で広津を見た。
普通の人間が見られれば、数日は悪夢に現れて魘されるに違いない、血と暴力の暴風を予感させる目。
太宰「__"ミミック"」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
首領に宜しく頼み込まれ、俺は太宰の双子の妹、Aさんと安吾の足取りを追う事になった。
然し目下、俺には何のヒントもない。マフィアの情報員を追うのは、逃げ出した飼い猫を捜索するのとは訳が違う(実際に猫探しをした事があるから間違いない)。
猫が姿を消したら、近所の餌場を張り込めばいい。だが安吾の餌場など推測しようがない。
仕方なく俺は、ある仮説を立てた。
兄様、この方は矢張り無理です→←兄様、時々冗談に聞こえません
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作者名:迷ヰ猫 | 作成日時:2020年2月12日 23時