君のためのベルスーズ (ページ3)

今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:7,767 hit

＃２ページ3

薮side

薮「どういうことだよ……！」

ダンッ！と壁に打ち付けた腕がじんじん痛み出す。

自信満々に立て掛けたお気に入りのギターは、今にも床に向かって倒れそうだ。

裕「俺たちがデビューできるわけじゃないって、こと…？」

伊「っ……」

俺たちの夢だったメジャーデビューなのに、喜んで居るやつはここにはいない。

知「ごめん……僕、浮かれてて…こんな形でデビューすることになるなんて…思ってなくて……ごめん……」

光「謝るな……知念のせいじゃないから……」

”デビュー日までこちらが提供する楽曲を完璧に演奏できるようにしなさい。大事なお披露目の日を台無しにされては困る。”

そう言って見下すように俺たちを見て笑った社長は、顔の整った青年の頭をサラリと撫でると

青年らを連れて会議室を出ていった。

薮「なんだよあの言い方……！！まるで俺らの演奏がダメみたいな言い方しやがって……」

光「薮……」

この話を受け入れるべきか否か…

メジャーデビューの夢は叶う…

でもこれじゃ、ただのエキストラ…サポートメンバーだ。

名前も乗らない…脇役じゃねぇか………

知「社長の話、断る……？」

裕「え、」

知「…だって……僕は、やりたくない事はやらなくていいと思う……」

薮「……」

知「僕は、！…高校の時からみんなの大ファンで……楽しそうに演奏してるみんなが好きだから…みんなから笑顔がなくなるなら…断るべきだと思う……」

知念が目に涙を浮かべて俺を見つめる。

知念の言う通りだ……

薮「俺も……」

伊「…俺は受けるべきだと思うよ。」

裕「いのちゃん…！」

伊「だってさ、メジャーデビューは俺たちの夢だったわけじゃん？…どんな形であれ、10年かかるかもしれない無謀な夢から一歩前進したんだから…これは大きなチャンスだと思う…」

光「確かに……」

伊野尾の言うことも一理ある。

でもそれって諦めじゃないのか？妥協して叶えた夢なんて、本当に叶ったって言えるか？

やっぱり俺は、俺たちだけで、俺たちの名前でデビューしたかった。

薮「伊野尾の言いたいことはわかるよ……でも俺は、馬鹿にされたままデビューなんて…！」

？「俺は彼の言う通りだと思うな〜。えーと、名前…あぁ、伊野尾くん！」

光「っ、お前……！」

口論でギスギスしていた俺らの楽屋に音もなくやってた来た

先程の”ギターを背負った青年”は、

扉に寄りかかり、空気も読まずヘラヘラと笑っていた。