波間のブルー(ss)二章完(移行へ) (ページ4)

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29you ページ4

波に少し動きが出た気がする。
舟がユラユラと揺れる。
風がもっと吹けば、きっと寒くて居られなくなる。

「…ねぇ。翔さん？」
「あーそれ嫌だー。さん付けとかもう嫌だー」
「ふふ。言うこと聞いてくれたら戻します。翔さん？」
「くっそ。何？」

また、子供みたい。
名前の呼び方ひとつでこうなるなんて…

「寒くなるから。そろそろ戻りましょうか」
「…落ち着く。すげー落ち着くんだよなー」

ちょっと棒読みみたいだった。
彼はそう言って、全然私を離そうとしない。

「何が落ち着くの？」
「お前とこうしてるの…落ち着くの。あー！もー…このまま居れたらいいやって気になってきたな。ただもう、それだけ…」
「え？」

そんな言葉が出てくるなんて意外だった。
私は思わず聞き返したけど、彼は私を腕の中に囲ったままで黙る。

「それだけって…」

このまま何もしないで居る？
何言ってるの。
あなたの目的は？
一体どこへ行ってしまったの。
私を一時の解消に使いたいだけでしょう？
そうじゃないと、予定は全て狂うじゃない。
私の目的も…
全部、狂ってしまう。