Ｔｏｐａｚ

◇寄り添って＿1 ページ38

大貴side




慧「んー……」


階段を降りたら明かりがついてるなぁ……と、見れば分かるけど。

リビングにいたのは……抜け目を狙って出掛けようとしている涼介ではなく、早朝から出張だと昨晩泣いていた慧。

………準備をしている……様子はない。


大「おはよ」

慧「あ、大ちゃん…！おはよう」

大「出張だろ？遅れるぞ」


6時には出ると言ってたのに、もう5時を過ぎている。

………しっかりと朝のコーヒーは飲んでやがるけど……のんきなやつ。

まさか、行きたくないって駄々をこねるつもりじゃないだろうな……俺だって今日は忙しいんだから付き合ってらんねぇぞ？


慧「出張…行きたくなーい」

大「何でそう予想通りなんだよ」

慧「休ませてもらえないかなぁ……」


ダイニングテーブルにスライムのように貼り付く慧。

土曜に行かされるのは可哀想だと思うけど、慧の場合普段家にいるからね？

しかも、今回は慧の企画でどうとか言ってたし……行かないとか無いだろ


大「俺も忙しいから付き合ってられねぇよ。早く行け」

慧「だよね………やっぱ休めないかな……」


……あれ、今日はやけにおとなしいな。

普通の父親に比べたら煩いんだろうけど、しゅんとして面倒臭い感じが今日はしない。

どちらかと言うと、ただ困っている……そんな感じ。


慧「せめて大ちゃんがいてくれたらよかったんだけど…」

大「は？俺が出張に付き添えって？」


いくらなんでも無茶を言う。

俺が慧に付いていったら家のことは誰がやるって言うんだ。

涼介と侑李だけで夜を越させるなんて出来るわけがない……本気なら父親失格。

第一、高校生の息子を連れていくとか恥さらしもいいとこだ。


………慧だと冗談ではない場合があるから、警戒して距離をとらないとな……

捕まらないように半径2メートル以内には近づかないようにしていたら、意図が分かったのか慧がジト目で唇を尖らせた。


慧「違うよ、家にいてほしかったの〜」

大「……なんで？」

慧「……昨日の夜中、侑ちゃんを病院へ連れていったのね」

大「え？……待て、どういうこと？」

寄り添って＿2→←思い出の＿7

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す