カルエゴ先生の短編集

言い間違え ページ1

午後。


カルエゴ卿は教室で生徒に教科を教えていた。

しかし、教室内では妙に生徒の足が浮き足立っていて、落ち着きがない。

カルエゴ卿は生徒を叱りつける。

「貴様ら!!少しは黙って行動出来んのか！？ 恐 縮 に !!」

あ、間違えた。

教室内から全ての音が消える。

恐縮、とは何か。

ここでは明鏡国語辞典第二版から説明をさせていただく。



きょう―しゅく【恐縮】[[名･自サ変]]

申し訳なく思い、恐れ入ること。

例)「彼は非常に―していた」

「迷惑ばかりかけて―の至りです」

「お心遣いを頂き―に存じます」



つまり。

簡単に言えば、“すんごくごめんなさい“を示しているのだ。

これを踏まえ、カルエゴ卿の言ったことを再度見直してみよう。

「貴様ら!!少しは黙って行動出来んのか！？黙って行動させられなくてスイマセンでした！」

という、なっかなかに気弱な感じになって、普段の厳粛で怖ーい先生はどっかへ逃げていってしまうのだ。


当然。



どっと教室内で笑いが起こった。

中には彼の口調を真似する者まで出てくる始末。

陰湿で年中不機嫌maxの彼にしては珍しく、顔を赤らめさせている。

「「粛に!!」」

と、照れ隠しに生徒を叱りつけるけども、

「あ、次は間違えないで言えましたね！」

とからかわれてしまう。

無論、彼らにお説教が実行されたのは言うまでもない。




翌日。

この事が職員室内では周知の事実になる。

新任のバルス・ロビンなどは、

「誰だって間違えはありますよ！頑張りましょう、カルエゴ先生！」

と慰めてきたりする。

いつも突っ掛かってくるこの新任が、優しい言葉を掛けてくる、彼にとっては屈辱的な体験が待っていたのであった。

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