少しくらい、俺のこと見てくれてもええんやで？【宮治】

優しい嘘 ページ27

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Aside






背後から聞こえた、馴染みのある声。



振り向いてみると
銀髪頭が風に揺れていた。





A「お、さむ…」



治「言うたやろ、はよせんと侑がうるさいって。」





はあ、と呆れたようにため息をつく治。



そんな彼の登場に、島田くんはイラついた声で口を開いて。





島田「なんでここおんねん。」



治「部活行くのに通りかかっただけや。」



島田「宮には関係ないやろ。まだ話の途中や。」



治「こいつもマネの仕事で忙しいねん。そろそろ返してもらわんと。」





グイッ、と突然左腕を引っ張られる。





A「わっ、」





予期せぬことに、思わずバランスを崩した身体は
そのまま治の胸で受け止められて。





治「ほな、行こか」



A「え？うん…」



島田「待てや！話終わってない言うたやろ！」





さっきよりも苛立ちの籠った島田くんの声が耳に届く。



だけど、そんな彼を大人しくしたのは治で。





治「振られたならさっさと諦めて失せろや。」



島田「……っ、」





島田くんに振り返りながら、そう言い放つ。



顔は見えなかったけど
声だけでも、その圧は充分に感じた。



島田くんが言葉を詰まらせたのが分かる。





治「…次、コイツに何かしたらただじゃおかへんぞ。」





そう言い残した治に背中を押され
されるがままにその場を後にした。








少し歩けば、すぐに見えてきた体育館。





治「やから言うたやろ、分かっとんか？って。」



A「まさかこんなことになるとは思わないじゃん。」



治「Aがアホなだけや。」



A「アホって……！」





はよ準備せなあかんなぁってぶつぶつ言ってる治。



スコアボードとか出したるからドリンク準備しとけよって、
マネージャーの仕事手伝ってくれるつもりみたいで。





A「…治。」



治「ん？」



A「ありがとう。来てくれて。」



治「…言うたやろ、部室行くのに通りかかっただけやって。」



A「……ふふ、」



治「なんや、気味悪いな。」



A「ひどっ！」





……私がいた中庭って部室とは反対方向にあるから、
教室から部室にまっすぐ向かおうとするなら絶対通りかかるわけがないんだよ。




……わざと、遠回りでもしなければ。





A「…わかりやすい嘘だなぁ。」



治「なんか言うた？」



A「ううん。」





本当に。



分かりやすくて、優しい嘘だ。






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