白濱くんが呼び捨てをしない理由。[Alan.S]

また ページ9

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Aside






その後すぐに、やってきた電車。



……とてもじゃないけど、乗る気にはなれなかった。





後ろに並んでいた人に列を譲って、自分は駅の中に戻る。



でも、結局行くあてもなくて
電車が走り去ったホームに戻ってきた。




辺りを見渡せば
ホームの奥、いつもは行かない自販機の向こう側に、
ベンチが置いてあることに気がついて。



自販機の死角になってて、
普段気にしなければ、見つけることもないようなところ。





自然と足はそちらの方へ進んでて、
そのままベンチに座り、さっきのことをぼんやりと考える。





A｢……｣





……冬馬は、私と付き合ってる間も、あのミホさんっていう子と親しくしてて。



ふたりの間で、私はなかなか別れてくれない、面倒な女ってことになってて。






……まあ、要するに。





A｢…浮気されてた、ってことね。｣





私のつぶやきは、虚しく空に消えていった。




自然と漏れてくるのは、深いため息。



…それと共に、歪む視界。





A｢……っ、｣





……ちゃんと、好きだったのにな。



デートとかもすごく楽しかったし、幸せだった。





A｢……あーあ、なんで気づかなかったんだろう。｣





気づいていれば、私から切り捨ててやったのに。


そんな思いとともに心の中に居座るのは、
気づけずいつもどおり過ごしていたことへの悔しさで。




何もする気になれなくて、ただ足元をぼーっと見つめ続けた。






……すると。





｢…次の便までまだ時間ある？｣



｢あと10分くらいじゃない？｣



｢ちょっと俺トイレ行ってくるわー。｣



｢了解〜。じゃあ俺いつものとこ居るわ。｣





かすかに聞こえてきたそんな会話。




そして、誰かの歩く音がだんだん近づいてきて。





｢…うわっ！｣



A｢…っ！！｣





驚きの声に顔を上げたら、1人の男子がこちらを見下ろしていた。


しかもそれは、知っている顔で。




……この前のイブの日と同じ。



また、この人に泣き顔を晒してしまった。




…少し違うことといえば、今日はその名前を覚えているということ。





今、私の目の前で目を丸くしている人の名前は、


……白濱亜嵐。





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