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日向が適当に見繕った喫茶店はひんやりとしていて、落ち着いた雰囲気だった。日向はコーヒーを、私はオレンジジュースを注文する。
「日向、ぐんぐんヨーグルトじゃなくていいの？」
「ぐんぐんヨーグルトは置いてないと思うよ、ここ。変なこと言うなあ」
彼はそんなふうにからからと笑っていたけれど、変なのはそっちだ。昔はこんな洒落た場所でお茶なんてしなくて、せいぜい公園のベンチで自動販売機の缶ジュースを飲むくらいだったのに。
「元気だった？」
「……えっ、ああ、うん！ 元気だよ！」
良かった、と柔らかく綻ぶ、そんな表情。前はしなかったくせに。
「そっちは？」
「色々あったけど元気！ 今はムスビィっていうチームでプレイさせてもらってる」
そっか、トライアウト、受かったのか。そうだよな。驚きよりも、納得のほうが先にやってきた。彼の努力が報われたのは、やはり嬉しい。
そこからはお互いの近況報告が続いた。と言っても、ほとんど日向の話だ。至って平凡な大学生活を送ってきた私と違って、いろいろな経験を積んでいる分、やはり日向の話は面白い。身振り手振りを交えて話す彼を、目を細めて見ていた。こういうところは、あの頃と変わらないのにな。
「あー……あのさ」
暫くそうしていて、日向がふと真顔になった。本題か、と思うと胃が重たくなる。思わず視線をテーブルに落とした。私のオレンジジュースは半分ほどにまで減っているのに、日向のコーヒーはほとんど量が変わっていなかった。やっぱり苦手なのか、とぼんやりと思う。そのままの格好で、言葉を遮った。
「ごめんね」
「何が？」
「連絡しなかったこと」
「え、いや、全然！ 俺だってしなかったし！」
慌てたように手を振る日向が眉を下げる。形のいい唇が、遠慮がちに動いた。
「むしろ、俺こそごめん。別れるか別れないか、結局全部丸投げにしたこと」
確かに、はっきりと自分の意見を言わなかった彼をずるいと罵ることもできただろう。けれど、私はそれを彼なりの優しだと認識していたし、憎くはなかった。本当は分かっていた。日向は自分があくまで「待たせる」側だと思っていること。必然的に、私は「置いていかれる」側だ。そんなのフェアじゃない、だから私に委ねたのだろう。そして、彼の意思だって、なんとなく察していたことだ。
「……ごめん」
先程よりもさらに力のない私の謝罪に、日向が鳩が豆鉄砲を食らったような顔になる。
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さかき(プロフ) - 莉葵さん» ありがとうございます！次の作品もぜひ読んでやってください〜 (2020年5月31日 12時) (
レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - 追記.応援してます！新作できたら、教えてくださいね(^^)日向愛が溢れちゃってます汗 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - すごく良いお話でした！感動しました！日向を見る目が少し変わった気がします笑 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - Ria*さん» 励みになります、ありがとうございます！日向いいですよね… (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 依さん» 依さんありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです！こちらこそまた読んでやってくださいな！！ (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2020年5月29日 16時
