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未だ整理ができない頭を置いてけぼりにして、口だけが勝手に動く。
「……そっか」
「反対しないの？」
「しないよ、だって、日向が決めたことだし」
嘘だ。このときの私のセリフは、まごうことなき強がりだった。本当は寂しかった。行かないでと泣きわめきたかった。でも、そんなものには意味がないと知っていた。私が駄々をこねれば、日向はごめんな、ありがとう、なんて言って、困ったように笑うだろう。そのくせ、自分の意思を貫き通すに決まっている。やってもしょうがないから、やらなかっただけだ。
「……別れる？」
「なんで」
「だって会えなくなるだろ。……あと、多分おれ、あっちにいる間ほとんど連絡しないと思う。ごめん」
反射的に聞き返したものの、それは至極当然のことのような気がした。あまりにも遠距離恋愛がすぎる。それに、彼は多分、本当に連絡をよこさないだろう。それは私をおざなりをするという意味ではなく、きっと自分に甘えを許さないという意味で。一年間、文字通りバレーボール漬けの毎日を送るに決まっている。
「……考えとく」
「そっか」
彼は自分の意見を言わない。それが唯一にして最大の意思提示だった。選択は、あくまで私に委ねられていた。
少しの沈黙が流れる。日向が引いている自転車の車輪のカラカラという音だけが、閑静な空間を横滑りしていった。しばらくして、私の家につく。手を振って自転車に乗った日向は、それきり振り返らない。出会った頃に比べると随分と大きくなった背中を見つめながら、これからの展開に思いを馳せる。
私は結局、別れたいとも別れたくないとも言わなかった。否、言えなかった。私たちはあっという間に卒業して、彼は一年間をブラジルに行く準備で忙しく過ごして、これまたあっという間に旅立ってしまった。悲しいことに予感は的中して、連絡らしい連絡は新年の挨拶くらいだ。私も、なんだかんだと理由をつけてメールの一つすら送っていない。宙ぶらりんの関係。もしかしたらもう終わっているのかもしれない、そんな関係だ。
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さかき(プロフ) - 莉葵さん» ありがとうございます！次の作品もぜひ読んでやってください〜 (2020年5月31日 12時) (
レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - 追記.応援してます！新作できたら、教えてくださいね(^^)日向愛が溢れちゃってます汗 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
莉葵 - すごく良いお話でした！感動しました！日向を見る目が少し変わった気がします笑 (2020年5月30日 12時) (レス) id: 5b76c35070 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - Ria*さん» 励みになります、ありがとうございます！日向いいですよね… (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 依さん» 依さんありがとうございますめちゃくちゃ嬉しいです！こちらこそまた読んでやってくださいな！！ (2020年5月29日 22時) (レス) id: 8b909e2b91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2020年5月29日 16時
