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 今日ばかりはマネージャーとしての激務がありがたい。忙しなく動き回っていると余計なことを考えなくて済む。

「先輩」
「うお」

 ビブスを抱えた私の背後に、いつの間にか長身の影があった。川西だ。

「世良先輩はたまには顔とのバランスを考えた方がいいっすよ」
「それ天童にも言われたんだけど何?流行ってんの?」

 半分持ちますよ、と川西が言うので大人しく甘えさせてもらう。いつの間にか休憩に入っていたらしい。
 二人で二階のギャラリーに上がり、欄にビブスを干していく。中腰の川西が子供同士のナイショ話のように声を潜ませた。

「先輩、今日送ります」
「……なんで?」

 私は寮には入っておらず、毎日実家から学校に通っている。それでも、歩いて二十分ほどの距離なのでさほど苦ではない。

「ほら、練習終わったらもう遅いですし、危ないでしょ」
「そんなに遠くないし平気だよ。ていうか川西あんた、私が格闘技やってたって言ったら『なるほどゴリラ』って言ってなかった?」
「そうでしたっけ」
「三年前の話だけどね」

 何やってんだ過去の俺、と顔をしかめる川西に向かって舌を出す。さっさと干し終わって階段に向かおうとすると、川西が私の手首をつかんだ。

「あっ、すんません」
「いやいいけど。どした?」
「送ります」
「ええ……?」

 この無気力で何を考えているのか分からない後輩が、ここまで何かに執着を見せたことがかつてあっただろうか。混乱するばかりの私に川西は食い下がる。

「だいたい、格闘技ってやってただけでしょ?」
「一応黒帯だけど。ていうか、私を送る時間があるんだったら早く帰ってご飯食べて寝なさいよ」
「そりゃそうなんすけど」

 やっぱりおかしい。私が練習帰りに一人で帰路につくのは今に始まった話ではないわけで、そんなものは今更だ。ということは、何か裏があるに違いない。

「ほんとのこと言って、川西」

 真っすぐに見据えると、川西の目線がゆらゆらと揺らいだ。罰が悪そうに下のフロアを指さす。

「……せんぱい、フラれたでしょ」

 正確には、指さしていたのはあの特徴的な髪色の頭だったらしい。
 どうして知っているのかと一瞬思ったけれど、そうか、今日のことは事前に川西に相談していたし、私の様子から色よい返事を貰えなかったことを察したのだろう。
 仕事に没頭することで忘れていた傷口が、再びじくじくとその痛みを主張しはじめる。それをごまかしたくて、小さく、鋭く叫んだ。

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金平糖 - 英太君にフラれた時は1日自分を責めましたね、馬鹿〜って。(作者さんは悪くありません)これからの展開が楽しみです!更新頑張って下さい!! (2021年1月3日 21時) (レス) id: 22491bc67a (このIDを非表示/違反報告)
レイラ - すっごい面白かったです!瀬見さんカッコいい!続き楽しみです! (2020年4月3日 16時) (レス) id: 1dbd6d09c3 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 妖精さん» 妖精さん初めまして、ありがとうございます!続き、楽しみにしておいてやってください! (2020年2月5日 22時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
妖精(プロフ) - 瀬見ィィィィィ!後悔しても知らないぞ!知らないぞ!すっごくおもしろくて、これからどうなるかたのしみです! (2020年2月5日 21時) (レス) id: 614bb0e68c (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - コムギさん» コムギさん!ありがとうございますー!励みになります更新頑張りますね〜! (2020年1月27日 5時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2020年1月24日 21時

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