一周回って芸術 ページ21
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恋愛偏差値、という表現はよく耳にするけれども、朝原さんは友達偏差値が低そうだ。コミュニケーション能力が低いというよりか、全体的に手探りな印象を受ける。
「私、親が転勤族で昔からよく転校してたの。それに顔に出にくいからなかなか友達ができなくて。異性なんて殊更そうだったから、宮と仲良くなれてうれしい」
そんな殊勝なことを言う。何といえばいいのか、ないはずの母性が刺激されるというか、庇護欲を掻き立てられるというか。口元に薄く浮かんだ笑みを見て、俺は純真なペットを猫かわいがりする飼い主が理解できたような気分だった。ちなみに我が家にペットがいたことはない。あんたら双子に飯食わすので精いっぱいやわ、とは我らが母の言だ。
「……そういや、結局北さんとはどういう関係なん?」
気にかかってはいたが、なんとなく今まで聞けなかったことを訪ねてみる。
付き合ってる、とかやったらどないしよう。二人に限ってそんなことはないだろうが、健全な高校生が男女で保健室に二人きりというシチュエーションは、限りなく黒に近いグレーだ。
それは嫌だ。具体的に何が嫌なのかと問われると、なんとなくとしか妥当な言葉が見つからないけれど。多分、そんなことに縁遠そうな二人がそうだったとして、脳が追い付かないからだろう。
「ああ、北さんは委員会の先輩なの。保健委員。何となく気があって、親切にしてもらってるんだ」
事も無げに断言する朝原さん。今日は掲示板に貼るポスターを作成していたのだという。
「私、壊滅的に絵心がなくてね。バレー部が練習に熱心なのは知ってたから遠慮しようと思ったんだけど、ダメだった」
朝原さんがポケットからメモ帳とペンを取り出して、さらさらと絵を描く。ほら、と差し出されたメモにやたらと大きく描かれているのは猫、だろうか。それすらも怪しい。なるほど、これはドのつく下手である。
「こんな調子だからいつも手伝ってもらってるんだよね」
それでも北さんが練習に遅刻したことなど一度もない。北さんのことだから、ぱっぱと役割分担をして効率的に済ませてしまうのだろう。我らが主将が完璧すぎる。
「……て、いうか」
ぶっと思い切り吹き出してしまう。あかんこれ、じわじわ来るな。
「朝原さん、いくら何でも下手すぎん!?なんで足が五本なん?」
「あ、それしっぽ」
ひい、と変な声が出た。見本を見せてやろうと俺が紙の裏に書いたのも大概で、二人して笑った。
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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時