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少女漫画的シチュエーション ページ9


 図書室に来たのは、入学当時に学校中を案内された時以来である。恐らく角名も銀も似たようなものだろう。三人して居心地が悪かった。

 朝原さんは図書室に着くなり、するりと人の波に紛れてお目当ての本を探しに行ってしまった。予想に反してそれなりに賑わっていた上棚が視界を遮るのも災いして、その姿を探すのは容易ではなかった。

「俺、朝原さん探してくるわ。二人は?」

「んー……角名、どうする?」

「帰る」

「は? 何しに来たん……」

「冷やかし。でもよく考えたら治を置いてきちゃったし」

 そういえば。その瞬間、いままで存在をすっかり忘れていた双子の片割れの顔が、俺の頭の中でゆっくりと頭をもたげた。せめて一言残せやボゲ、と言うので大人しく奴を角名と銀に任せることにする。

 ひらひらと手を振って二人の背を見送る。さあ、朝原さんを探しに行くか。

 やはり俺が図書室にいるのは珍しいのか、顔を目にした女子が無遠慮な目線を寄越すなりあからさまに驚くなりする。それらを一切無視して、俺は棚と棚の間を闊歩した。
 そうして見つけた後ろ姿は、どうやら高いところに置いてある本を取ろうと四苦八苦しているようだった。俺と彼女との身長差は約三十センチ、朝原さんには取れない位置でも俺なら余裕だろう。あたりをつけて、俺は軽やかに背後から手を伸ばした。

「ほい、これで合っとる?」

 びくりと肩を震わせた朝原さんは素早い動きで音源を探り当て、見上げた。強張った顔が俺を確認したとたん、少し緩む。いつもの何を考えているのか分からない顔になった。

「合ってる、ありがとう」

 本を手渡す。朝原さんは依然、こちらをじっと見上げている。身長差があるのでこの近距離だと首がほぼ九十度になっているというのに、痛くないのだろうか。

「な、なんやねん」

 朝原さんが動かないので、俺もなんとなく動けない。俺は後ろから覗き込む形なので体勢は楽だが、無表情に見つめられてただただ居心地が悪かった。

「いや、綺麗な顔してるなあと思って……」

「……はあ!?」

 思わず大きな声が出てしまい、それからここが図書室だったと慌てて口を覆う。じわじわと顔に熱が上るのが分かったので、勢いのままに飛び退いた。

「なんなん急に……!」

「あ、ごめん。宮くんだってわかって気が抜けて、なんかぼーっと見ちゃった」

 俺に向き直って、悪びれずそんなことを言う。照れさせるのはまた失敗、返り討ちにされた。

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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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