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きょうだい ページ15


 いきわかれの、きょうだい。この人は今、そう言っただろうか。

「……はい?すんません、治に殴られて耳やられてしもうたんかな。もう一回ええですか?」

「せやからな、生き別れの兄妹。朝原さんは俺の妹や」

 今度こそ、その意味が正しく脳髄に叩き込まれる。途端、遠慮のない悲鳴が口を突いて迸った。

「はあ!?」

「……こっちがびっくりするくらい驚いてる、けど、仕方ないですかね」

「せやな、ちょっとびっくりしたな」

 いや、全然しとらんやん顔色変わっとらんやん……!そんなツッコミを入れている余裕はなかった。平時でも北さんにツッコミを入られるかは別として。
 混乱のし過ぎか、意識の隅にかえって冷静だった。酷く動揺する俺とを無表情に二人が見守る様は、控えめに言ってシュールだ。

「え、朝原さんは関西の生まれやないって」

「ううん、面倒だからそれで通してるだけ。実際、こっちを離れたのはまだ二、三歳の頃で記憶はほとんどないよ」

「名字は、」

「……言わなきゃダメ?」

 寂しげなような、困ったような表情。そんな顔をされたら、何かのっぴきならない過去があることを察せざるを得ない。そして、それが決して彼女にとっていい思い出ではないことも。俺はぐっと押し黙った。

「高校になってからまたこっちに戻ってこられることになって、こうして時々お話してるんだ」

「公にはしとらんよ、ややこしいやろ。混乱させてすまんかった」

「あ、いえ……」

 朝原さんの言葉を補足する北さん。こうして見ると、角名や銀が口をそろえて言うように二人は確かによく似ている。

「ただいまー。北くん、朝原さん、任せててごめんねー」

 語尾を緩ーく伸ばしながら保健室に入ってきたのは養護教員で、彼女はあら宮くんじゃないですか、と目を丸くする。俺はそれだけでなんだか体の力が抜けてしまって、彼女のもとに退避した。

「また喧嘩ですか? きみも懲りませんね」

 勤勉な先生と言えど、俺に対しては呆れを隠そうとしない。宮兄弟の喧嘩が名物、と言われるまでの回数分応急処置をしてきたのだから当然だろう。しかも、保健室にやってくるのはほとんど俺だ。悔しいことに、治は俺よりも力が強かった。

「アイツのせいやで、ポンコツをポンコツ言うて何が悪いん?」

「一番ポンコツなのは宮くんの人格でしょ」

 ムッとして何か言い返そうとしたが、擦り傷に容赦なく消毒液を刷り込まれて、言葉は小さな悲鳴に変わった。

後押し→←兄弟喧嘩が名物です



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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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