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しょうじょまんがかっこかり ページ11



「やった」

 断られたらどうしようかと思った、と同じになった目線で朝原さんは珍しく分かりやすく笑う。

「まず形から入ろうと思って」

「なんの?」

「えっと」

 少し照れ臭そうな逡巡の後、彼女は図書室の静寂に溶かすように言葉を発した。

「宮、私とお友達になってください」

 俺は唐突に理解した。なるほど、少女漫画のヒロインポジは彼女ではなく俺だったか。
 途端、なんだか朝原さんがイケメンに見えてきた。あれ、イケメンにしか吹かない風が吹いたで今。もちろん、実際には開け放された窓から風が吹き込んだだけである。

「お、俺なんかでええの……?」

 そうは分かっていてもおあつらえ向きな恥じらう乙女のような返事を返してしまうのだから、俺はつくづく単細胞というかなんというか。

「宮がいいんだよ。改めてよろしくね」

 これがまた、意識はしていないのだろうが、朝原さんのセリフも大概少女漫画のそれなのである。
 席替えから早約三週間。隣の席になった女を照れさせようと思っていたら、返り討ちにされた挙句になにがどうなったのか、友達の座を手に入れてしまった。

 ぱっ、と勢いをつけて立ち上がる彼女は俺にもう貸し出し手続きした?と問う。差し出された右手は捕まれということなのだろうか。所在なさげに見上げているとずいとこちらに近づいたので、きっとそうなのだろう。遠慮なくその手を借りた。

「あー、オススメとか教えてもらいたいなあと思うて」

 胡麻化すのが得意ではない俺にしては上々の言い訳だ。

「じゃあ……これとか」

 手渡されたのは、俺がさっき棚から取ったハードカバー。真っ青の表紙をしたそれを意外な気持ちで見つめる。

「ああ、私ならそれはもう何回も読んでるから。面白いし、読みやすいと思うよ」

 俺は昔から本当に本を読まない人間で、それにしてはこの本は厚すぎる気がした。しかし心なしかうきうきした表情をした朝原さんを無碍にできず、大人しく貸し出し手続きを済ませる。

 教室まで帰る道中、彼女は宮、宮とやたらと俺の名前を呼びたがった。よほど嬉しかったのだろうか。なんにせよ、一連の流れから漂う不慣れさから察するに、やはり朝原さんは友達が少なそうだ。あれ、涙出てきた。

 俺よりも大分低い位置にある頭部。それを見つめながら、めちゃくちゃ仲ようしてやらんととらしくない決意を固めている自分がいた。

 

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せなけいこ - この夢主ちゃんの性格も、少女漫画のヒロインな宮侑もめっちゃ好きです!この作品を生んでくれてありがとうございます。性癖に刺さりまくりです!! (2020年9月18日 15時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» お返事が遅れてすみません!色々考えたのですが、本編はここで終わりにします。しかし私としても書きたいネタがまだたくさんあるので、そのうち別作品と纏めて短編集を出そうかと…。なので、気長に待ってくださると嬉しいです。 (2020年3月5日 1時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - さかきさん» ただ私がこの主人公もミヤツムも好きなので続いて欲しいっていう我儘なのですが…( ; ; )もし続きを書こうか少しでも考えてらっしゃるならぜひ見たいです…! (2020年3月2日 3時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - mimiさん» 初めまして、まず初めにご愛読ありがとうございます。ごめんなさい、話数の問題で断念したんですが、やっぱり終わりにしては歯切れが悪いですよね…!?もう少し何とかできないか検討してみます! (2020年3月2日 0時) (レス) id: d263cbf7f6 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - はじめまして。こちらずっときゅんきゅんしながら読ませて頂いてました…!最後、終わりとなってますが完結なのでしょうか( ; ; )続きを楽しみにしてたので… (2020年3月1日 14時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかき | 作成日時:2019年9月24日 23時

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