番外編 ページ46
・
「治くん、重いよ」
「んー」
「いや『んー』じゃなくて、可愛いけどさ。重い……って言うか恥ずかしいんだって！」
私の必死の主張は、また生返事で済まされた。それどころか、背後から抱き締める腕はそのままに、私の頭に顎を載せる。痛い。
卒業式の日の帰り道で、四月から離れ離れになるのか寂しいねと言ったら、治くんはあっさりと何言うとるん、大学も一緒やろと返した。思わず足を止めた私を振り返った治くんの呆れ顔を、よく覚えている。
「ちょっと待って、聞いてない」
「は？ 侑のやつ、言うとらんの？」
全くの偶然だが私の進学先はバレーボールが強い学校で、宮兄弟はそろって推薦を貰っていたらしい。そう言えば私と侑くんの間での受験の話題と言えば、私のことばかりで彼の話は全く聞かなかった。こちらもスポーツ推薦で進学するんだろうなというだけで納得してしまっていたから、深くは掘り下げなかったのだ。
そんなわけで、私たちは今や学部の名物(バ)カップルのようになっていた。これは百パーセント彼が悪い。
まず、学部まで一緒だった。これが偶然なんだから恐ろしい。
そして、付き合う前からあんな調子だったから覚悟はしていたけれど、治くんはとんでもない砂糖の塊だった。所かまわずすぐに引っ付くし甘える。私はというと少しはなれたけれど、でもやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。
「治くん、食堂行くんでしょ」
「んー……」
今日はそれしか言わない日なのか。困って周りを見渡しても、半笑いかニヤニヤした人たちが通り過ぎるだけで、誰も助けてくれない。遠慮のえの字もなくニヤニヤしているのはバレー部の面々だ。治くんのおかげで彼らとは一通り仲良くなれたけれど、ことあるごとにからかってくるので困る。
「なんで機嫌悪いの？」
これじゃ顔が見えない。身をよじって腕から抜け出すと、彼は予想通りの不貞腐れた顔をしていた。
とりあえず食堂行こうよ、とそでを引っ張る。治くんは大きな体をのそのそと動かしてついてきてくれた。空腹には抗えないらしい。
私は中華丼を、治くんは色々と注文しすぎて煩雑なお盆を抱えて椅子に座る。あ、と大きく口を開けて中華丼を一口要求するのは忘れない。
「あげるから、理由話してね」
有無を言わさぬように、さっさとレンゲを口に突っ込む。治くんはそれをもごもごと咀嚼してから、ようやくその重い口を開いた。
「ほかの男にくっつきすぎや」
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか？あるようでしたらボード？にお願いします (2019年9月19日 7時) (
レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…（ ; ; ）本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー！好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです！治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです！ (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ！！！めっちゃくちゃ好きです！！！番外編も嬉しいですありがとうございます！！治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです！満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください！お粗末さまでした！ (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さかき | 作成日時：2019年8月9日 17時
