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「侑くん……」
「うわっ、どないしたんその顔」
「恋する乙女の顔」
「せやから……いや、もうええわ」
治くんショックにやられてふらふらとした足取りで教室に戻ってきた私は、そのまま前の席の侑くんに声をかける。からかってやろうという魂胆がバレバレの顔が振り向いて、たちまちぎょっとした表情になった。
「治くん恐ろしい子なんだけど。知ってたけど。大丈夫? 中学の頃わんさか告白されて、それを掻き分けて進むからモーセみたいになってなかった?」
「なんなんその無駄な想像力。なるわけないやろアホか」
「ど、どうしよう……年上の彼女とかいた事あるんじゃない!? 無理色気で勝てない」
「聞けや」
この貧相な体が良くないな、うん。かといって、年下のカワイイ系にも勝てる気がしない。勝てるところといえば想いの大きさか。ストーカーと言われればそれまでだな。
「うわぁあああどうしよう今更だけど身の程知らずだね!? それでも好きだけど!」
「おーい大丈夫か? 誰に向かって語りかけとるん?」
「侑くん。で、彼女は! 治くんの色恋沙汰の経緯は!」
「色恋沙汰て。まあ人並なんとちゃう? あんま長続きしとらんかったし、大抵相手からってパターンやな。てか俺の方がモテとるし」
「あーうんそうだよね。あんまり興味なさそうだしなあ……」
「スルーか」
侑くんの方がモテるのは事実だ。ただ物事は捉えようで、アイドル的扱いをされている侑くんより、隠れ人気の高い治くんの方が一人一人の本気度が高い可能性がある。当然その中には可愛い子も美人も、未だ知らぬ治くんの好みのど真ん中をいく子もいるわけで。
ふと、侑くんが私の顔をのぞき込む。瞳におちゃらけた光はなく、どうしたのと問おうとしたところで先を越された。
「てか、Aはどうしたいん?」
「どうしたいって?」
「プロポーズして以来、どうしたいとか言わんやん。いっつも『好き』だけで」
付き合いたいとかないん?――その言葉は、青天の霹靂だった。
確かに、漠然と「好きになってもらえればいいな」とは考えていたけれど、その先は霞がかかったように見えない。
頭の中を整理するように、数回瞬きする。口から出た声はとても間が抜けていた。
「え、……どうなんだろ」
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さかき(プロフ) - mimiさん» 話数的にあと一話だけなら書けそうです。内容によっては私に向いてないかもしれないんですけど、もしよかったらリクエストとかありますか?あるようでしたらボード?にお願いします (2019年9月19日 7時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初コメ失礼します。きついです、この作品まだまだ続いて欲しいです…( ; ; )本当に2人とも可愛くて… (2019年9月19日 2時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - 瑞稀さん» やったー!好きとか可愛いとか言って貰えて嬉しいです!治は甘え上手なイメージがあります笑番外編も楽しんで貰えたら幸いです! (2019年9月18日 23時) (レス) id: 8018115b1b (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - あぁぁぁ!!!めっちゃくちゃ好きです!!!番外編も嬉しいですありがとうございます!!治くん甘えた可愛すぎて… (2019年9月18日 18時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - まゆ。さん» おつありです!満足いただけたでしょうか。治で書くかどうかは分かりませんが、書きたいネタはいっぱいあって私自身ワクワクしてるので、よかったらまた読んでやってください!お粗末さまでした! (2019年9月18日 16時) (レス) id: cb48af79f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さかき | 作成日時:2019年8月9日 17時