会いたい理由 ページ25
「上出来だ」
茨木童子は返答に満足したのか、少し乱暴に私を解放した
も、もうなんなのよ!
今でも胸がバクバクとうるさい
「…君は、一体どこから来たんだ?」
ザァァッと強い風が吹き、樹木の葉がざわめいた
「ここから、遠いところだよ」
未来からきた、なんて信じてもらえないような気がして
私は言葉を濁した
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辺りは夕方になり、妖怪が活発になる時間帯が近づいてきた
「君はもう帰るといい。夜の山は危険だ」
私は納得し、黙って安倍晴明の庭院へ戻ることにした
山の麓まで降りた私は、後ろにいる茨木童子に振り向く
「明日も、会いに来てもいい?」
茨木童子は眉のシワを寄せた
「なぜだ?鬼が怖くないのか」
茨木童子の冷えきった目が私を貫く
「そりゃ私、幽霊とか苦手だけど悪い鬼から守ってくれた鬼は、怖くないよ?それに、まだ酒呑童子を見つけてないし…」
友達探しを手伝うって約束だもん
私は優しく微笑んだ
「君は勘違いしているようだ」
茨木童子は言い放つ
「私は人間ごときを守るような優しい鬼ではない。友を求め、そして戦いを求める修羅の鬼よ」
淡々と言葉を続ける茨木童子は、まるで自分に言い聞かせているようだった
「君がいた場所が戦いがあったからだ。助けたわけではない」
「それでも、私からしたら助けてくれたことにかわりないよ」
負けずに、言葉を紡ぐ
「茨木童子は弱い奴に興味無いんでしょ?私は…変な力があるけど弱いし、襲ってきた鬼も強いとはお世辞でも言えなかったし」
修羅なんかじゃないよ
「本当に修羅の鬼なら…私のことなんて気にもせず、放っておいたはずだよ?」
「そ、それは…小妖怪ごときに人間を食えば私を倒せるとほざいてきたからだ!」
「でも私がいなかったら無視したでしょ?」
「うっ…」
「修羅の鬼なら、弱者の私はあなたの傍にいない。茨木童子は優しくて、強い鬼だよ」
多分、優しいという自覚をどこかに置いてきちゃったんだね
「あまいな。そのままだといつか悪い鬼に喰われてしまうぞ?」
「…その時は呪ってやるんだから」
やられっぱなしなのは、むかつくからね
「…ふん」
茨木童子は何も言わずに、山の奥へと帰って行った
「何で私、鬼なんかに必死で優しいって言ったんだろ」
私は思わず笑ってしまった
ここに来てから私は変だ、あの鬼に毒されたかな
不思議と嫌な気持ちではなかった
別の温かい何かが、私の胸を支配した
*訂正
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はぐはまさ - 麻乃さん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます、頑張ります(*´∀`*) (2017年10月9日 18時) (レス) id: 1a4672ac58 (このIDを非表示/違反報告)
麻乃(プロフ) - はぐはまささん» はぐはまささんの書かれる茨木童子かっこいいです、もっと読みたいです(*´-`*) これからも応援してますヘ(*`∀´*)ノ (2017年10月9日 17時) (レス) id: 66c6973d83 (このIDを非表示/違反報告)
はぐはまさ - 麻乃さん» ありがとうございます!!!( ´ ▽ ` ) (2017年10月9日 17時) (レス) id: 1a4672ac58 (このIDを非表示/違反報告)
麻乃(プロフ) - 更新お疲れ様です!(o´艸`) (2017年10月9日 13時) (レス) id: 66c6973d83 (このIDを非表示/違反報告)
はぐはまさ - 召使い丁さん» いえいえ!逆に確率アップじゃない時に出るなんて、凄いですね(°_°) ありがとうございます!! (2017年9月12日 8時) (レス) id: 1a4672ac58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はぐはまさ | 作成日時:2017年4月30日 19時