・ ページ44
『＿＿はぁ、は、……もう、ホント馬鹿じゃないの』
「人に言えた事じゃねェだろィ」
十数分の雪合戦の後、2人して疲れきって雪の上に寝転んだ。
空は快晴で、どこまでも見通せるような真っ青。背中の冷たい雪の感覚は麻痺してあまり感じられなくなっていた。
汗なのか雪なのか分からないけど、髪の毛もグッショリ。これは早急にお風呂に入って体を温めないと風邪を引いてしまう。
そう思い立ち、雪に預けていた体を起こして隣で大の字に寝転ぶ総悟の腕を引っ張る。彼も髪を濡らしていて、ぼうっと空を見上げていた。
『総悟、風邪引いちゃうから部屋に戻ろ』
「＿＿＿なァ、A」
『うん？……あ、言っとくけど一緒にお風呂なんて入らないから』
「ちげェよ」と軽く笑った総悟は濡れた髪を掻き上げる。髪から滴った雫が顎から伝って零れ落ちていき……本当に、何をしても絵になるなぁ、と。
彼を見つめながらそんな事を考えていれば、不意にその赤い瞳が大きく揺れた。薄く開かれた口からは＿＿＿＿＿
「＿＿＿＿結婚、するか」
『……え、』
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
ただ、至極真面目な顔つきで赤い瞳が私を真っ直ぐに射抜いて。その口から待ちに望んだ言葉が出てきたのかと、ようやく理解して。
＿＿＿冷たく冷やされた頬は徐々に熱を持ち、涙が零れた。
『……っ馬鹿じゃないの、』
「なんで」
『だっ、て……今寝起きだし』
「うん」
『総悟もっ…私も、びしょ濡れだしっ』
「うん」
『普通さぁ、そういうのって、もっとロマンチックな時に言うものじゃないの…？』
「うん」
『ほんと、空気読めないバカ……』
「＿＿＿＿不服かィ？」
流れた涙も拭えずに、たどたどしく言葉を紡いだ。
刹那、握っていた手を引っ張られて総悟の腕の中に閉じ込められる。濡れた彼の背中に腕を回せば、乾いた笑いを零して「指輪も何も用意してねェけど」と呟いた。
『…不服なわけ、ない』
青い空の下の銀色の世界。
涙に濡れた頬を撫でるように包み込んだ愛しい彼は、ふっと綺麗に微笑むと＿＿＿優しく、深く唇を重ねた。
.
きっとこれからも、
幸せなひと時を
かけがえの無い時間を
繰り返される春夏秋冬を
愛しい君と
Fin。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (
レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています！ (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました！ (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました！表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした！次の企画があることを楽しみにしています！ (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました！素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます！！素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます！ (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しののめ x他4人 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年7月1日 1時
