坂田銀時【中村】 ページ17
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──夏の夜というのは、孤独感を増長させる。それは私の持論であり、事実現在進行形で私は孤独感を感じていた。これぞ夏の夜という感じで、なんというか。
(……早く去ってしまえ、切実に。)
この熱帯夜では、気だるげに頭を振る扇風機も頬を伝う汗も、身を包む全てが私の孤独を際立たせているかのようだった。……その上。
「──ねえ、向こう着いたら何食べる？」
「とりあえず綿菓子！でもかき氷もいいなぁ」
窓の向こうからやってくる夜風に、そんなものをのせられてしまってはたまらない。流れ込んだそれらを拾ってみると──綿菓子、かき氷。
だからつまるところ、お祭りである。耳をすませばお囃子の音も聞こえてくる気がした。お祭りにほかならない。……っていうかお祭りって何？華の20代だってのにひとり寂しく家で涼んでた私へのあてつけ？
「やってられるかコノヤロー」
そんなよくわからない苛立ちとともに家から出たのが、ほんの十数分前の話である。
＊
──現在地、コンビニ。飲み物売り場の目の前。
ほぼ八つ当たりに近い苛立ちに押された私は、勢いだけで家から出てきてしまったのだけど……当然の如く、行くあてもなく。
というかそもそもこんなとき気軽に立ち寄れる友人宅があったなら私は孤独にうち震えてなどいないのだ。ならば彼氏宅？そんなものは論外だし。存在しないものにどうやって行けと。
まぁ孤独な私がそんな訳でたどり着いたのが、悲しきかな最寄りのコンビニであって。
「──はぁー……」
この熱帯夜が引き起こした内心の大嵐を沈めるように、私は大きな溜息を吐いた。──そして、重い重いそれが、紙パック飲料の上にふりかかったそのとき。
「A？」
背後からそんな声が聞こえた。不意打ちのそれに思わず肩を跳ねさせながら振り向けば、そこにいたのは。
「坂田さん」
彼は同じ町に住む知り合いだ。「何お前、今にも孤独死しそうな顔してんぞ」「坂田さんこそ性格が頭に現れてるよ」交わされるのは知り合いというには些か遠慮のないそれだけれど、まぁ心地よくないこともないのでよしとする。
「ぶっ飛ばすぞ」私の憎まれ口に軽く凄んだ彼は、すぐにその顔をいつもの緩みきったものへ戻した。そして一言、「買いもんか？」。
……さて、何と答えたものだろう。しかし答に一瞬迷った私は、不意に妙案を思いついた。とりあえず「坂田さん」そう投げかけて。
「どーです、一緒にお酒でも」
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (
レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています！ (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました！ (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました！表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした！次の企画があることを楽しみにしています！ (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました！素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます！！素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます！ (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しののめ x他4人 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年7月1日 1時
