神威【美桜】 ページ15
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『神威、神威、』
「……?」
ーーー蝉がミンミンと煩い夏の候。
吉原へ視察に来、寄り道がてら彼女の家へとやってきた俺は、Aの膝の上に頭を乗せて寝ていた。……はずだった。
夏空のような澄んだ声色に目を開けると、いつの間にか俺の頭は畳の上で。暑いのが苦手な俺のために、ひたいに乗った冷えピタと頭の近くに置かれた大きな氷の入った麦茶。
体を起こして、麦茶に口をつける。
そして、Aを見れば胸いっぱいに黄色い向日葵を抱えていた。
にっこりと笑いながら下駄を脱いで縁側に座るAの隣に腰掛ける。ちょうど日陰が差しており、気持ちいい。
『まだ体調悪い?』
「悪いっていうか、……最悪だね」
Aの抱えきれないほどの向日葵を指差して「それどうしたの」と聞けば、隣の家のおばちゃんにもらったとか。向日葵は彼女にとても似合う。
太陽のようにまっすぐで、笑顔の綺麗な彼女。
『……向日葵、見に行きたいな…』
江戸の外れに、大きな向日葵園があるらしい。
でも、日光に当たることができない俺に遠慮してAはいつも外に出ることはしない。家の中で二人で過ごすのが基本となっていた。
……ぼそりと呟かれた言葉に「ごめん」としか返せない。
ーーー俺も普通の人間だったら、彼女と炎天下の下で向日葵をみたり、海に行ったりと普通のカップルと同じようなことができたのに。
『もうそんな顔しないで!私は神威と一緒にいられるだけで十分嬉しいから』
「……………」
『ねぇ、今日は何する?』
自分のやりたいことも我慢して笑う彼女の腕を引っ張って自分の胸の中に引き寄せた。
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あくび少女 - こんな綺麗な物語、いつか私も書きたいです。 (2019年7月20日 22時) (レス) id: 1b61770dea (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 今までどの作者さんも好きでよく拝見させていただいてました。今では、憧れから自分の小説を書いているのですが、皆さんの素晴らしさを身に染みて感じました。(宣伝みたいですね……ごめんなさい。)これからも沢山の作品を楽しみにしています! (2018年2月6日 22時) (レス) id: 6b9c59579e (このIDを非表示/違反報告)
うおーあいにー(プロフ) - 私が今まで見たことのない位の語彙力と素敵な言葉でできていました! (2017年12月9日 8時) (レス) id: 7ec2bdde97 (このIDを非表示/違反報告)
みぷ(プロフ) - 文章一つ一つが綺麗で、とっても素敵だなと思いました!表現や言葉にも意味が詰まっていてぜひ参考にしたいなと思う作品でした!次の企画があることを楽しみにしています! (2017年7月28日 18時) (レス) id: 941945c1ec (このIDを非表示/違反報告)
戦胡蝶(プロフ) - 本当に綺麗な言葉で綴られたお話ばかりで全部一気に読んじゃいました!素敵なお話ばかりで心がほっこりしてます!!素晴らしい作者様ばかりで私も見習わないとと意気込んでおります(笑)またこういう企画を行ってくださるのを楽しみにしてます! (2017年7月27日 13時) (レス) id: de5c5c0c62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しののめ x他4人 | 作者ホームページ:http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時:2017年7月1日 1時