サイレント・クンツァイト２ (ページ3)

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「樹運転じょうずだね」
「ん、でしょ？(笑)」
「もっと荒いのかと思ってた」
「いや俺めちゃくちゃ安全運転よ？(笑)」
「うん、ちょっと感動してる」
「なんでだよ(笑)好きな子乗せてんだから余計安全運転心掛けてるわ(笑)」
「………」
「…あ、黙った。(笑)」

…サラッとそういうこと言わないで欲しい。

「…そろそろ慣れてよ？(笑)」

俺、こういうこと口にしたいタイプだもんって開き直る樹。

向けられる眼差しも表情も声色も言葉も。

樹から伝わってくる全ての五感がどことなく柔らかくて、甘くて、優しい。

……慣れないよ。

「A免許持ってんだっけ？」
「うん、一応」
「運転できんの？(笑)」
「え、私運転めちゃくちゃ上手いよ？」
「マジで？(笑)」
「うん、前に邪魔なヤツいたら赤甲羅投げるし、スター取ったらもう最強」
「うんそれマリオカートやってるね？すんごい怖いね？それ」
「大丈夫だよ、レート10000超えてるから！」
「…絶対お前には運転させない」
「なんでよ、落っこちてもジュゲムが…」
「お前ぜってーキラー！無双モードだあ！つってスピード違反するからダメ」
「けち」

いつも通りの軽口と冗談でふざけ合ってたら、到着、って樹が駐車場に車を停める。

着いた先は、お台場。

車を降りて歩き出そうとしたら、

「…じゃあ俺のワガママ聞いてもらうよ？」
「えっ、なになに、すっかり忘れてたんだけど…」
「……ん」
「え…？」

何言われるんだろうと思ったら、樹が手を差し出す。

……繋げってこと？

恐る恐る手を伸ばしたら樹が嬉しそうな顔して私より一回り大きな手で、私の指の間を潜ってきゅって握る。

そのまま私の手を引いて歩き始めるから慌てて着いていく。

「とりあえず腹減ったからメシ食う？」
「うん……」
「じゃあそーしよ」

大きなショッピングモールの中にあるお店でお昼ご飯を済ませて、ブラブラ歩き回る。

その間もずっと繋がれたままの右手。

お店に入ったり、買い物したりして自然と離れる手をまた歩き出す時に自然に掴んできて。

一通り回って買い物して。結構歩いたね、ってカフェに入って時計見たらもう夕方で。

「…アレ乗ろ」

テイクアウトでカフェラテ頼んで外に出たら少し離れた場所に見える観覧車。

頷いた私に優しく笑って歩き出す。