26 ページ26
「そういうAちゃんはどうなの?」
「どう、ってなにが?」
「好きな人。…いないの?」
「いないよ〜、恋したい、助けてシンタローくん」
「えー!(笑)Aちゃんどんな人が好きなの?」
どんな人………
「一緒に出かけた時に結局行き帰りの道中が一番楽しかったねってなる人」
「………ごめん、全然わかんない、詳しく」
目的の場所へ出掛けたり、旅行したりした時にその目的の場所での記憶よりも向かう車の中での些細な会話や軽口が1番の思い出になっちゃうような、そんな人。
いつもと変わらないようなことしか話してないけど、帰ってきて楽しかったな、って浸った時に何故か道中や本当に他愛もない場面での光景が1番に浮かんじゃうような、そんな人がいい。
なんとなしに浮かんだことを詳しく説明したら、慎太郎くんはぽかん、とした顔をした。
「わからないならいいよ、私もわかってない(笑)」
「…わかるよ?(笑)わかるけども(笑)」
「あとは…何でもない日にいきなり両手いっぱいの花束とかもらってみたい」
「え、え?(笑)」
「それで私がびっくりして固まる」
「ねえAちゃん絶対拗らせてるでしょ(笑)」
「そう、私拗らせてるの(笑)」
さっきから意味わかんないことばっか言ってる!普通は優しくて〜とかじゃん!(笑)って肩揺らして笑われる。
…ほら、わかってないんじゃん!って思ったけど目の前にあるカフェラテとケーキ見て飲み込んだ。
好きって何だっけ、どうやって好きになるんだっけ、ってぽつりと心の声をこぼしたら慎太郎くん吹き出してやばっ!重症です!入院です!って馬鹿にしてきた。
……だって、ほんとにもう何年も好きとかそういうのやってない。
大学入ってから特に周りが合コンとかサークル内での恋愛とかそういうので盛り上がってたけど、私とは無縁だった。
好きだと言ってくれた人がいなかったわけじゃない。でも好きだと告白される度、この人は私の何を知ってて何を好きになったんだろう?
そう思うと不思議で仕方なかったし、そんな気持ちのまま付き合うなんて出来なかった。
言い方変えれば私のこと何も知らないのに好きって嘘だよ、って信じれなかった。
そんなこんなで無事、こんな拗らせた私が無事出来上がったのだけれど。
1203人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なち | 作成日時:2021年9月19日 3時