53.気がついたこと ページ4
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私はタクシーの中で何を謝りたいのか、自分でもよく分からないまま謝った。
ジョングクは時々｢うん｣と頷くだけで、私を責めたり嘲笑ったりしない。
そうしてタクシーが見慣れた場所に着く。バイト先の前ではスマホを耳に当てたジョングクがタクシー越しの私の目を射抜くように見ていた。
よろつきながらタクシーを降りる。ジョングクが運転手さんに運賃を支払って、私の身体を支えた。
腰に回るその手は確かに男の人のものなのに、暖かいその感覚に酷く安心をする。
｢入ろ｣
｢……うん、ありがと｣
店の横の階段を登って、休憩の時に使っている狭い部屋へと入る。雑然とした部屋はいつもの風景の筈なのに、今となっては違って見えた。
｢どこも痛くない？｣
｢……肩いたい。カーディガン引っ張られた｣
逃げる時に掴まれたカーディガンのせいで、変な方向に力の入った右肩と腕がじんじんと痛んだ。私はそっと肩を摩ると、ジョングクは立ち上がって私の肩に触れる。
｢逃げてきたの。カラオケ行ったら、襲われて……やばいなって思って、顔を引っ掻いて逃げてきた｣
｢うん｣
｢財布も全部置いてきちゃった……どうしよう……｣
｢大丈夫｣
ジョングクは優しい声でそう言った。
｢私のこと、怒んないの？｣
｢怒る気失せた｣
｢……私、馬鹿だよね……ほんとに｣
また込み上げてきた涙を拭うと、ジョングクは私の肩をゆっくり摩った。暖かい掌と予想外に優しいジョングクに、私は俯いていた顔を上げる。
そこには、時折見せる泣きそうにも困ったようにも見える顔のジョングクが居た。
その顔を見ると、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差す。何もかも分かっていなかった無知な自分が情けなくて、恥ずかしくて。
――ジョングク。ずっと私を心配していたんだ。
この表情の意味は、きっと勘違いなんかじゃない。
｢……ハヨンさんには黙っとく。テヒョンさんにもお願いしておくし、俺は誰にも言わないよ｣
｢ジョングク、私のこと馬鹿だって思わないの？｣
私はついそんなことを聞いた。
全部ジョングクの言った通りになった今、私を一番責めるのはジョングクだと思っていたのに。
私の言葉にジョングクは少しだけ怒ったように眉を顰める。
｢馬鹿になんかする訳ないだろ｣
｢……ごめん｣
｢今日のことは忘れなよ……帰ろう｣
すっと手を伸ばされて、私はそれを躊躇いつつも握った。引っ張りあげられるように立ち上がる。
私達はそれからお互いに黙ったまま、帰路に就いた。
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おけ(プロフ) - ここまで1日で読みました‼︎このお話大好きです！応援してます！ (2022年2月8日 23時) (
レス) @page40 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - はるさん» ありがとうございます〜！デビュー当時辺りを想像して書いてました 楽しんでもらえて良かったです！また気が向いたら続きも書くので、よろしくお願いします^^* (2020年2月7日 9時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - ひゃ〜〜この作品は大好きで何度も読み直しているので、新しいお話嬉しかったです！なんとも守ってあげたくなるまだまだあやふやなグク、、主人公ちゃんと出会って、お互いを好きになれて本当に良かったなと思いました！これからも応援しております！ (2020年1月29日 2時) (レス) id: 75eff8e160 (このIDを非表示/違反報告)
sai(プロフ) - じみちむさん» ありがとうございます´`* ちょいちょい書き足していきますので、また読んでください〜！ (2019年8月29日 22時) (レス) id: 00e0a369b0 (このIDを非表示/違反報告)
じみちむ(プロフ) - 番外編も最高でした♪( ´▽｀) (2019年8月26日 17時) (レス) id: f91208f58d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sai
| 作者ホームページ：https://twitter.com/xxx___sai/
作成日時：2019年6月9日 16時
