White Dream Story -2-

その先にあるもの（宮舘/渡辺） ページ6

《渡辺side》


気に入らない。
うまくいかない。
上手く歌えない。
何年かぶりのスランプ。


ドラマやバラエティーなどで忙しくても、喉のケアやボイトレはしっかりやってたつもりだ。
それでも上手く音が出ない。
あんなに自然に出来てたことが、今はどうやっていたのかも分からない。


歌番組に出させてもらう機会もグッと増えて、メインで歌うことが多い俺は、やっぱり『歌うこと』への執着が強くなる。


康「しょっぴーっ！今日もバッチリやったね♪」

蓮「俺は良かったと思いますよ。」


みんなはそう言うけど、自分ではそうじゃないことは分かっている。
みんな優しいから、俺を追いつめないように、優しい言葉を掛けてくれている。
毎日のタスクをこなす為の気休めにはいいかもしれない。
でも、俺は‥‥


大「翔太ぁ！明日休みだろ？
　 ふっかと買い物行くけど、来るぅ？」


買い物仲間でもあるメンバーの佐久間が、俺に声を掛ける。
いつもなら乗るんだけど、今はそんな余裕俺にはなくて、


翔「悪い、明日用事入ってて。」


悪いとは思ったけど、嘘をついて断った。
少しでも歌の練習をして、スランプから抜け出さないと‥‥


先「喉に力入ってるよ。
　 もっとリラックスして。」

先「高音もうちょっと綺麗に出せるよ。」


ボイトレの先生からダメ出しの嵐。
自分でも分かってることを指摘され、更に削られる俺の自尊心。
唯一の武器がなくなっていくみたいで、焦りが増す。


家に帰っても、ひたすら自主練を繰り返した。
今日の反省点を少しでも改善したい。
以前の『俺の歌』を取り戻したい。
その一心だった‥‥


ある日の歌番組の収録。
新曲を披露するんだけど、めちゃくちゃ緊張している。
歌えなかったらどうしよう‥‥
不安ばかりが胸をザワつかせる。


辰「よーしっ、いつも通りいこうっ！」

照「気負わず俺たちらしくね！」


何気ない言葉でも、今の俺には全てが枷のように重くのしかかる。


結果は惨敗。
音は外すし、綺麗に出せなくてほんとに聴くに耐えない。
自分への怒りでどうにかなってしまいそうだ。
俺は楽屋に戻ると、どうしようもない気持ちを壁にぶつける。


ラ「しょ、しょっぴーっ⁈」

大「おいっ！何してんだよっ！」

翔「うっせーなっ！ほっといてくれよっ！」


止めに入った佐久間の手を振り払う。
嫌だ‥‥嫌だ‥‥こんな自分‥‥
俺は再び拳を振り上げたが、腕が動かない。
俺の腕を取っていたのは、


涼太だった‥‥

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