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『見つけた』
背後から覗き込むように顔を出す彼女を銀八はチラと見てまた前を向く。
さっきの出来事は銀八にとって面白くない。
『怒ってる?』
「怒ってませーん」
『えー? どうしたら許してくれる?』
そう聞きながらもクスクスと笑う彼女は反省などしていないだろう。
「まじ帰ったら覚えとけよ...」
『ふふ、熱烈ね』
「っはぁーッ!! 本当、そういうとこ!!」
会計を終えた商品を乱雑に袋詰めする銀八にAは口を開く。
『普段は見ることができない”先生”をやってる銀八の姿が好きなの』
「……」
『本当よ? 土方くんが羨ましいくらい』
ジト目で彼女を見る銀八は深い溜息を吐き出した。
このどこまでもズルい女に一生敵わないんだ、と自覚しながら。
「生徒とは恋人になれないでしょうが」
『そうよ、だからこうしてたまに”先生”に会うの』
袋詰めを終えた銀八にAは出口に向かって歩き出す。
「欲張りだなー」
『私だけの特権でしょう?』
「まぁ…、そうね」
肯定の意を口にするとAは満足そうに笑った。
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作者名:アカツキ | 作成日時:2024年1月14日 0時