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『でね〜、凄く優しい人なの』
「分かりましたから、Aさん、お水飲んでください」
『聞いてきてのは貴方でしょう? ちゃんと聞いてよ』
現場に到着した銀八はその光景に顔を手のひらで覆い、天を仰いだ。
「…すいません、此奴回収します…」
「あ…! Aさんの…! すいません」
「いえ、此方こそ。迷惑掛けたみたいで…」
「とんでも無いです、俺の方こそ誤解を招くようなこと」
先ほど電話に出たであろう部下の男はとても良い人で、銀八は己の取った態度に反省していた。
Aの荷物を纏め、彼女を支える様に抱き上げ立ち上がらせる。
「ほら、A、しっかりしろ」
『銀八ィ? 何で居んの?』
「お前が連絡寄越さねぇから心配して迎えに来たんですゥ」
『えー? あはは、優しー』
「はいはい、お前記憶無くさないタイプなんだからそのくらいにしとけ? 後悔するよ?」
呆れた様子の銀八とそんな彼に支えられほろよい気分で嬉しそうなA。
二人のやり取りを部下である男はボーッと見ていた。
「んじゃ、此奴連れて帰ります」
銀八が軽く会釈をし、その場から去ろうとしたところ、「あの…!」と黙っていた部下が声を投げ掛けてきた。
「お、俺、Aさんにはめちゃくちゃお世話になっていて、憧れで」
「今日の会社の飲み会も、俺が誘ったんです」
「……今日は本当にすいませんでした」
「帰り道、お気をつけて」
ペラペラと喋る彼は、そう言い切ると深く頭を下げた。
まさかそんなことを言われるなんて…。
銀八は思わず面食らったが、「ふは、」と小さく噴き出すと口を開いた。
「あんま仕事の話はしねぇけど、」
「アンタみたいなしっかりした部下が居るなら安心だな」
「これからもAの事、よろしく」
銀八の言葉に彼は顔を上げると照れくさそうに笑う。
「本当、Aさんの言う通り、優しい人ですね」
面と向かってそう言われると何て返せばいいのやら。
銀八が口籠っていると『でしょ?』とAが得意気に笑った。
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作者名：ｱｶﾂｷ
| 作成日時：2024年1月14日 0時
