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(土方side)
いつもは飄々としてる其奴が零した本音は俺には想像できなかった。
「もう失いたくは、ねぇよな…」
嗚呼、それは、よく分かる。
「そうだな…」
万事屋は困ったような、無理に作った笑顔を俺に見せては黙々とパフェを食べ続けていた。
もっと味わって食えば良いものを、まるで喉に無理やり流し込むみたいで見ていて痛々しかった。
「…今度、飲みにでも行くか?」
「なんか今日すげぇ優しいね? 同情?」
「そんなんじゃねぇよ、嫌なら良い、忘れろ」
「…いンや、嫌な言い方したわ、悪い…」
俺もそうだが、此奴も大概… お互い素直になるのは慣れていなくて少し気持ち悪い。
「そうだな、飲もうぜ」
万事屋の言葉に俺は少し笑って残りの珈琲を飲み干した。
.
.
.
『土方さんと一緒だったの?』
「まぁね、」
『……甘い匂いがする、何か食べてきた?』
「え?!」
15時少し前、万事屋はAを迎えに行くんだと席を立ったので俺も見回りに戻ることにした。
二人のやり取りを見て、やっぱり此奴はすげぇなと思う。
こんなにも自然にAと話すことが出来るなんて、多分俺には無理だ。
「じゃ、また店でな」
「おー…、色々有難うな」
「お前が素直なの気持ち悪ィな…」
「はぁ?! おまっ、人が折角…!」
俺は笑って踵を返した。
彼奴は俺に礼を言ったが、これは別に万事屋の為じゃない。
“A”との約束なのだ。
「彼奴は俺と一緒で不器用だから、酒が入らねぇと本音は言えねぇよな」
本日何本目かも分からない煙草に火を付けた。
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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時