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「はぁっ、はぁ…っ!」
息が切れて胸が苦しい。
それでも足を止める事なく全力で歌舞伎町内を走った。
そんな俺に何人かが驚いた顔で振り返ったが気にしていられない。
「A!!」
此処で怒鳴り声を上げるのは二度目だ。
今となっては懐かしい。
「随分早かったな、銀の字」
たくさんのコードに繋がれたAを見つめる源外は俺の方を振り向きもしなかった。
____初期化を開始します。
淡々とした音声が流れ、直ぐにピッピッと嫌な音が鳴る。
「おい! 止めろ!」
「銀の字、もう止められない」
「A、頼む…」
ふらふらとAに近付いて顔を覗き込んだ。
ふ、と開く瞳に俺を写す彼女はそれはそれは穏やかな表情をしている。
『貴方のおかげで愛を知りました』
『”A”にはなれなかったけど』
『もう、大ジョウ、夫』
彼女の伸ばした手のひらが頬に触れる。
体温なんかないはずなのに、此奴はいつだって熱すぎる程の熱を持っているのだ。
「俺はッ、お前に…、…!」
Aはもう片方の手も伸ばして両頬を包み込む。
そして繋がれたコードがギリギリ抜けない距離まで来るとそっとキスをした。
まるで続きの言葉を言わせないように、口を塞ぐ。
『アリガ、と、ウ』
相変わらず笑顔は”本物”で唇を噛んだが、同じように笑って見せる。
「…こっちの台詞だよ」
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アカツキ(プロフ) - おひなさん» はじめまして、温かいコメント有難うございます。またご縁がありましたら読んでくださると嬉しいです (8月15日 7時) (レス) id: a7c4fa7239 (このIDを非表示/違反報告)
おひな(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございました!😊 (8月14日 23時) (レス) @page38 id: fb3fd917e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年7月24日 13時