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嫌な匂いが鼻を付く。
先ほどまで会合と言う名の宴会が行われていたであろう一室は酒の匂いと、そして今は血の匂いが混ざっている。
呻き声を上げ動きの鈍くなった”それら”を、Aは横目に見ながら他の部屋へと向かう。
土方からの命令はこうだ。
________誰一人逃すな。
逃げようとする人間が居れば殺してでもこの場に止める。
Aはまた一つまた一つと部屋を訪れては逃げようとする人が居ないか確認して回った。
「Aさ〜ん、こっちはもう片付いたんで土方さんに報告お願いしやす」
頬に血を付けた沖田はいつもの口調だったがAを見るその目が獣そのもので、ただ淡々と『分かりました』と言う他なかった。
すぐ言われた通り土方の元へと戻ったAは土方の名を呼んだ。
「片付いたか」
『はい、現在は一番隊が...』
「…? どうした」
『旦那、何故此処に?』
土方の背後に視線を移す彼女のその言葉に土方はバッと振り返る。
「此処等一帯は閉鎖してるはずだぞ?!」
「そーね、"穴"があったんじゃない?」
「チッ...、一般人を名乗るならさっさと帰れ」
そうは言われても銀時は肩を竦めるだけでこの場を去ろうとはしなかった。
「ちょっとだけ聞きたいことがあるんだけどさー…」
銀時はそう言うと背後に何かの気配を感じ瞬時に腰に掛けた木刀を抜いて振り返る。
どこから現れたのか、捕縛対象の残党が銀時に襲いかかったが見事にその刀を受け止めた。
「A!」
『はい』
土方に名前を呼ばれ、Aはすかさず銀時の助太刀に入った。
「ふぅ…危ね…」
「だからさっさと帰れっつっただろうが」
「いやぁ、そうなんだけどさ…」
「…? さっきから何なんだ、煮えきらねぇな」
銀時は言いにくそうに頭を掻きむしる。
二人の会話を横に聞きながら、Aは銀時の先ほどの”目”が印象的で彼をジッと見ていた。
「何?」
『…いえ、旦那が何者なのかと思いまして』
「ふは、それはお互い様じゃね?」
『そうかもしれません』
銀時は一頻り笑い、「ふぅ」と息を吐き出すと少しだけ真剣な顔付きをした。
「土方、ちょっとAちゃん借りて良い?」
「直ぐ返すから」
「あ”? 今は仕事中…」
「…チッ、5分だけだ」
土方はそう言うと煙草に火を付け離れていった。
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アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 最後まで読んでくださり有難うございました。めぐぽん様からのコメントとても励みになりました。 (7月2日 22時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - 完結、お疲れ様です!改めて、アカツキさんのお話が好きだと思いました。また楽しみにしてます! (7月2日 12時) (レス) id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 完結の目処は立っていますので更新はコンスタントに行えると思います。最後まで見守って下さると嬉しいです。コメント有難うございます (6月24日 14時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - あさん» はじめまして。コメント有難うございます。かなり前に書き溜めてた作品を軽く手直ししながら載せているので至らない所もあるかもしれませんが、最後まで楽しんで頂ければ幸いです... (6月24日 14時) (レス) id: d828e70b5b (このIDを非表示/違反報告)
めぐぽん(*´・∀・)(プロフ) - 更新ありがとうございます!続きが楽しみです! (6月24日 12時) (レス) @page16 id: baf8bee298 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年6月21日 22時