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卒業式には出なかった。
正直、高校3年間に思い入れがあるかと聞かれると無い。
ただ最後の一年、彼女とパズルをしていた短い期間は悪くなかった。
「…嗚呼、悪くなかった…」
改めて声に出して呟いたがそこには高杉しか居ないので誰かに聞かれることもない。
思い返せば暇潰しだったとしても不思議と居心地は良かったのだ。
空を見上げながらそんな事を考えているとポケットから携帯のバイブ音が聞こえる。
差出人はAだった。
彼女からのメールは初めてで、二人がメールのやり取りをしたのは「絵が見たい」と言ったあの一回きり。
高杉は内容を読んで校庭の方に目を向けた。
[桜が咲きました]
そんな文とは裏腹に、体育館横の桜の木はまだ咲いていなかった。
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式が終わると卒業生は記念撮影をしたり、アルバムに寄せ書きをしあったりと、忙しなく動いていた。
中には部活動で集まるグループもある。
高杉もまたいつものメンバーといつものプレハブ小屋で暫く過ごした。
結局Aにはメールの返事をしないでいた。
正確には何て返事をしたら良いのか分からないのだ。
「晋助、美術室には行かなくて良いでござるか?」
「あ? …どうせ開いてねぇだろ」
高杉の言葉にまた子や万斉、武市…そして似蔵までもが顔を合わせた。
「晋助様、見てないんスか?」
「何がだ」
「彼女の作品ですよ」
「…布で覆われてる」
「俺は目が見えないけど、良い香りがしたねぇ」
「香り…?」
次々に語られるそれに高杉は怪訝そうな顔をした。
「見てくると良いでござる」
「お主の為に”咲いている”」
万斉がそう言うと他の3人も頷く。
益々訳が分からないで居たが時間も時間だ。
高杉は溜息と共に腰を上げた。
「チッ…行きゃ良いんだろ…、何奴も此奴も」
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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時