31. ページ32
あれからAには会っていない。
美術室の前を通り過ぎる時は何となく教室内を覗いてみたりもしたが、そこに彼女は居なかった。
パズルには大きな黒い布が被さっていて進捗具合は確認できない。
「気になる?」
その声に前を向くとそこには白衣身に纏った銀八の姿がある。
高杉は心底嫌そうな顔をしたが「別に」と答える。
「Aなら、」
「余計なお世話だ、彼奴が何してようがどうでも良い」
「……、お前さ、良い加減にしろよ」
銀八の冷たい声と、冷たい視線に高杉は口を噤んだ。
「言ったじゃん、」
「"彼奴は肝心なことを何も言わない。それはお前も一緒だ”って」
「だから、何が言いたい」
「ハッ、分からねぇの?」
「思ったよりも鈍感なんだな、”前”はそうじゃなかった」
そこまで言うと銀八はふ、と表情を緩めた。
そして廊下の窓を見る。
「今年の桜は遅咲きだってよ」
「卒業式には咲きそうにねぇな」
確かにこの冬はかなりの寒波が続いていて、受験生である三年は風邪を引かないようピリピリしていた。
高杉もまた学ランの下にはカーディガンを着ている。
同じように外を見ると身を縮こませながら帰宅する生徒が数人居た。
「”約束”は守れよ、高杉」
「彼奴はちゃんとやったぞ」
そう言って去って行く銀八を高杉はただただ見送ることしかできなかった。
---
58人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時