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Aと高杉は他愛もない話をした。
今まで一人で美術室に居たAにとってそれは少しこそばゆく、しかしどこか楽しい。
そしてそれは高杉もまた同じであった。
カチッとピースの当て嵌まっていく瞬間が気持ちいい。
「何でパズルなんざ始めたんだ」
高杉の質問にAは手を止めたがまたパズルのピースを探す。
そしてぽつりぽつりとその質問に答えた。
『美術部は私しか居なくて、廃部になってしまったんですけど…』
『顧問の先生が”最後の作品はやり遂げろ”と言ってくれたので』
また顔を上げて高杉の方を向く。
『高杉先輩は何で美術室に?』
Aの質問に高杉は答えなかった。
彼本人も此処に来た理由などあってないようなもので、曖昧なのだ。
『先輩って変わってますよね』
「ぁ?」
『悪い意味じゃ無いですよ、何か…”この感じ”は知ってます』
「......」
『妙に落ち着くというか』
『変ですよね』、Aは苦笑いする。
Aの言葉に高杉は何も言わない。
彼女の言う、“この感じ”の正体を知っているのか知らないのか。
それ以降、二人は会話をしなかった。
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.
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「おーい、そろそろ閉めるぞー」
やる気の無い、間伸びした声に二人は扉の方に顔を向けた。
そのシンクロに2人を呼び掛けた人物は「ふはっ」と吹き出して笑う。
「何、高杉も居んの? 後輩いじめしてねぇだろうな」
「誰がするか。手前ェこそ何で居やがる、銀八」
「先生な。美術部の顧問だからだよ」
高杉と銀八のやり取りを他所に片付けの帰りの支度を終えたAが銀八の元へと近づいた。
『遅くなってすいません』
「んじゃ、後閉めとくから気をつけて帰れよ」
『はい、お願いします。さようなら』
軽く一礼して美術室から一歩出た彼女はピタリと止まり振り返る。
そして銀八の背中から覗き込むような形で高杉を見た。
『高杉先輩も、さようなら』
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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時