28. ページ29
『やめて! “晋助”!!』
高杉はピタリと手を止めAを見た。
『やめて…』
力なくそう言う彼女に高杉は舌打ちをする。
制服のカーディガンの袖を握り締め震えているのは怒りとか恐怖とかそういうのでは無い。
Aはただただ悲しい気持ちになったが高杉の前で泣くのも違う気がして唇を噛んだ。
その場で力なく座り込み、バラバラになったパズルを拾い始める彼女に高杉は教室を出て行った。
『……』
ぽたりぽたり、と我慢していた涙が溢れピースの上に零れ落ちる。
Aはまた一人静かにパズルを当て嵌めていった。
.
.
.
「おーおー、派手にやられたな」
「さっき高杉とすれ違ったけど、すげぇ形相だったよ。何かあった?」
Aは首を横に振り否定する。
何もない訳ないのは一目瞭然だったが、銀八は深く聞かなかった。
「…俺もやって良い?」
それ、と指差すのは真っ白のパズル。
今度は首を縦に一つ頷く。
壊されたと言っても、全部が全部バラバラになったわけでもなく、いくつかのピースは外れることなく繋がったまま地面に落ちていた。
彼女は慣れた手つきでぱちぱちと外れてしまったピースを繋ぎ合わせた。
「凄いな、全然当て嵌まらねぇよ」
『…ここです』
「おわっ、本当だ」
ぴったり嵌まるそれに楽しそうに声を上げる銀八にもAは力なく笑うだけだった。
「本当に完成させたい?」
『完成させる、..."約束"をしたの』
「…見れると良いな」
『うん』
「彼奴は、”約束”を破るような奴じゃねぇよ」
『…今回は私が約束を守れないかもしれない』
いつも敬語で丁寧な言葉遣いの彼女がそんな口調で会話した。
銀八はそれについて何も言わない。
静かな教室にパチ、パチ、とパズルのピース同士が当て嵌まる音だけが聞こえた。
---
58人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時