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Aは微かに震える手で携帯の電源を落とした。
数分前に来た高杉からの始めてのメールに、緊張と喜びと、あとはよく分からない感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ったが恐る恐る開いたメールの内容に心臓が一つ大きく鳴った。
[お前の絵が見たい]
どうして突然そんなことを言い出したのか、疑問は不信感に包まれた。
未だドクドクと嫌な音で鳴る心臓を落ち着かせるように何度か深く深呼吸をする。
『…ふぅ……』
何て返すか思い悩んだ末、彼と同じように短く返事を書き送った。
再び目の前のパズルに取り組もうにも集中できず、地面に山になっているピースを強く叩き付けるのだった。
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夏休み中、高杉は美術室には来なかった。
Aのメールの返事が気に食わなかったのか、または都合が合わなかったのか。
暇潰しに飽きたのかもしれない。
新学期が始まってもAは相変わらず黙々とパズルを作り続けていた。
パチ…、
当て嵌まる度に手が止まり、数分してまた次のピースを探す。
「よォ、調子はどうだ?」
もう来ないだろうと心の何処かで思っていた少しだけ懐かしい声。
Aは勢いよく顔を上げる。
『高、杉先輩...』
高杉はそのまま教室に足を踏み入れ、Aの隣に腰を下ろした。
知らない間に完成しているパズルを見ると近くのピースを探り出す。
『…怒ってない、んですか?』
「何がだ」
『メールの事』
「…ンな事で一々怒るか、下らねぇ」
その言葉にAは初めて表情を緩め、安心した顔をする。
もしかしたら、高杉が来なくなったのは自分が怒らせてしまったからではないかと気にしていたのだ。
そんな彼女に高杉は別の話題を切り出した。
「A、お前、俺の事を知ってるかァ?」
高杉の質問にAは首を傾げた。
『どういう意味ですか?』
「…ずっと引っ掛かってんだ、お前は知ってるのか」
Aの脳内はさらにクエスチョンマークを増やした。
意味の分からない質問だが、巫山戯ているようにも見えない。
真っ直ぐAを見る高杉の右目が彼女を映していた。
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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時