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高杉は足繁く美術室に通った。
1万のピースを前にしても高杉は飽きることなく黙々と作業を続けた。
時折腕を天井へと伸ばし固まった体を伸ばす。
『あれ、高杉先輩、もう来ていたんですか? 早いですね』
「5限からな」
『え、授業ですよね?』
「サボった」
当たり前のようにそう言う高杉は床に手を付き体を寄りかからせた。
流石に1万ともなるパズルはそう簡単には完成しない。
それでも着実に繋ぎ合わせていく。
『私少し課題やってからそっちやります』
「俺も休憩すらァ」
教室の隅に寄せられていた机を引っ張り出し席に着く彼女に高杉は立ち上がり教室を出て行った。
どこへ行くとも告げなかったが聞かれることもない。
踵の踏み潰された高杉の上履きの音がペタペタと音を鳴らして遠くなっていった。
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「A」
そう呼ばれた女はノートから顔を上げた。
目の前には高杉が立っていて、トン、と机に置かれたのは紙パックのイチゴ牛乳だった。
「やる」
『えっ、そんな、悪いです』
「俺は甘いもんは飲まねェ」
『…わざわざ買ってくれたんですか?』
高杉の手にはブラック珈琲があり、既に缶のタブが開けられている。
「こっちより好きだろ」
Aは申し訳なさそうにしつつ、お礼を言うとストローを刺した。
確かに珈琲はそんなに得意ではないので彼女としてはありがたいし、嬉しい出来事だった。
『私が好きだって、よく知ってましたね?』
「……言わねぇでも分かる」
高杉は冷たく言い放つとまたパズルの散らばったサークル内へと戻って行った。
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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時