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Aが目を覚ましたのは体を軽く揺すられたからだった。
いつものように美術室で作業をしていたはずの彼女にとって見覚えのない天井と、嗅ぎ慣れない消毒液の匂いにどうして此処に居るのか理解するのに時間が掛かった。
「具合はどうじゃ?」
月詠先生は優しい声でそう聞きながらAの鞄と靴を準備していた。
「車回してきたけど、どう? 帰れそう?」
「熱はすっかり下がったな、水飲んで帰ると良い」
「お前、集中し過ぎて熱中症で倒れてたんだよ」
上体を起こした彼女の額に触れ熱を測る月詠は水の入ったコップを手渡した。
それを受け取りながら銀八の説明を聞きようやく理解したAは『すいません』と謝った。
「ぬしは悪くない、銀八の監督不行き届きだ」
「あー… それに関しては反省してるって」
「高杉が此処まで連れてきた時は驚いたが…」
そういう月詠に銀八は「げ、」と嫌な顔をしてすぐに「大丈夫なら帰ろう! 送るから!!」なんて言い出す。
まるで彼女にこれ以上何か聞かれては不味いとでもいうようだ。
受け渡されていたコップの水はすっかり飲み干されていて、Aはそれを月詠に渡すと鞄を手に取り改めて頭を下げた。
「お大事に」
背後からそんなお決まりの台詞が聞こえたがAは振り返らなかった。
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『高杉先輩は…』
「彼奴なら帰ったよ」
『そう、ですか』
車のシートベルトをしながら質問したがあっさりと返事され、それ以来高杉のことは何も聞かなかった。
「…何か焦ってる?」
『そう見えますか?』
「質問してるのは俺なんだけどなぁ…」
ハンドルを握りながらそう彼女を見ずにぼやく銀八にAは小さく笑う。
『今日はちょっとやらかしました』
『次回から気を付けます』
ふい、と窓の外に顔を向ける彼女の様子を横目に、銀八は片腕を伸ばして頭をぽんとひと撫でした。
「…まぁ好きなようにやりなさいよ」
「勿論、無理の無い程度でな」
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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時