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13. ページ14

 




美術室内の光景に高杉は勢いよく扉を開けた。
教室の中には確かにAの姿は在ったが彼女は散らばったパズルの上に倒れている。
 
 




「おい…!」
 
 
 



鞄を放り投げ、近付きそっと彼女に触れる。
その熱さは異常と言える程で高杉は顔を歪めた。
 
 




『せんぱい、?』
 
 





ふと意識を戻したAは薄らと開いた虚な目で高杉を認識すると力なく笑う。
何を笑っているんだ、と言いたいところだがそうも言っていられない。
高杉は彼女を抱き抱え立ち上がった。
反動でパラパラとパズルのピースが崩れ落ちる。
 
 






「…?」
 
 






運びやすいよう、己に抱きつく形に持っていこうと彼女を腕を掴んだがその手にはパズルのピースが一つ握られていた。
 
 







「貸せ」
 
 







指の間から取り上げカチリと嵌め、それが見事に一致したその時。
ざわ、と嫌な感じが胸の中で渦巻いた。
 
 




.





.





.



 


「熱中症でありんす」
 
 






保健室は他の教室と違って冷房が効いていて涼しかった。
白衣を着た養護教論である月詠はそう診断すると銀八を睨んだ。
 
 
 






「全く、この暑さで生徒を放置するなんて」

「仰る通りで…」

「彼が居なかったら大変なことになっていたぞ」
 
 







高杉はと言えばベッド横の小さな丸椅子に腰掛け彼女の様子を見ていた。
 
 
 





「高杉? どうした」
 
 



「何でもねぇ」
 
 



「…とりあえずもう少し落ち着いたら送っていきなんし」
 
 
 






月詠の言葉に銀八は「おー」と短く返したが今度の高杉は二人の教師を振り返った。
 
 
 





「…親は迎えに来ねぇのか?」
 
 
 





そんな質問に二人は顔を見合わせて少し困った顔をする。
 
 
 





「此奴の両親は他界してるんだ」

「それも結構早くに…可哀想じゃが」

「中学までは親戚の家に世話になってたみたいだけど、今は一人だよ」
 
 
 






初めて聞く話に高杉は驚き目を見開いた。
横で静かに眠る彼女はまだ己とは一つしか年が違わないとは言え、一人なのだ。
 
 








「お前は"此処"でも一人なのか」
 
 








そうぽつりと呟いてAの頬に優しく触れる高杉を月詠も銀八も見守っていた。
 
 
 








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アカツキ(プロフ) - 花咲あずみさん» 暖かいコメント有難うございます。全て、ですか...それはまた貴重なお時間頂き..... そのように言って貰えて感無量です (4月22日 15時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
花咲あずみ - 完結までの間お疲れ様でした。アカツキさんの銀魂の作品は全て読ませてもらいましたが全部本当に素敵な作品で何度も見てます!アカツキさんの作品が一番好きです! (4月22日 14時) (レス) @page39 id: e15ecd0c92 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 奥宮さん» コメント有難うございます。伏線張るだけ張って全然回収出来ていないのでそこを汲み取って貰えて感謝です... 気紛れに書いているのでまた機会がありましたらよろしくお願いします。 (5月31日 7時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)
奥宮(プロフ) - 完結おめでとう御座います!!本当文才といい伏線、そして物語全て神ががっててそんでキュンキュンする話とかもぶっ込んできてるせいでもう、何というか天才ですね!?こんな面白い作品に出会えて、追いかけれたことが何よりも嬉しかったですありがとうございました!! (5月30日 18時) (レス) @page37 id: 6e2eb1af59 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - めぐぽん(*´・∀・)さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って貰えて嬉しい限りです…! 高杉オチを書こうとすると大体こんな感じの暗さになってしまうのですが楽しいのでまたいつか書きます。その時は良しなに (5月30日 13時) (レス) id: 417deeb455 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年5月16日 16時

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