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サァァァ、と吹き付ける風は澄んだ空気と、懐かしい景色、そして香りを運んだ。
Aは風で乱れた髪を手で抑え、深く息を吸う。
銀時よりもずっと慣れた足取りで向かう先には小さな門構えの家がある。
そこは彼女が一人でやっていた寺子屋兼、自宅。
『此処に来たかったの?』
言ってくれれば良かったのにとでも言いたげな彼女は銀時を見る。
銀時はまた困ったように、それでいて言いづらそうに口を開こうとしたがそれは別の声に阻止された。
「あれー? A先生だ!」
「おかえりなさい!」
「その人だれー?」
此処には居るはずのない子供達の声が聞こえ、Aも銀時も振り返る。
小さな庭に数人、彼らはA達を見つけるなり傍に駆け寄ってきた。
『わ、みんなどうして此処に?』
「来て!」
一瞬で「先生」の顔に変わる彼女に銀時は一歩下がってそれを見ていた。
ぐいぐい引っ張られ戸惑うAは銀時の方を振り向いたが、彼は行って来いと手で合図する。
しかしそんな銀時の手をも子供達は引っ張り取る。
「お兄さんも!」
「ったく、しゃーねぇな」
満更でもなさそうな声にAは小さく笑った。
.
.
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「ほら、もっと踏み込んで来い」
「やぁ!」
「そーそー、良いじゃん」
バシッ! バシツ!、と竹刀同士が激しくぶつかり合う音が響く。
銀時は数人の子供を相手に打ち合いの稽古に参加していて、Aと他の女の子達は縁側で綾取り遊びをしていた。
「A先生、また寺子屋やるの?」
『んー? やらないよ、”先生”はお休みなの』
「えー! つまらないー」
口を膨らませ不服そうなその子の頬を銀時の指が突く。
その反動で「ぷう」と情けない空気の音が口から出る。
「なにするの! もう!」
「ははっ、小せぇ風船が出来てたからつい」
『稽古はもう終わり?』
「銀時強ぇー! 全然勝てない」
そりゃ、大人だからね。
言葉にせずとも得意気な銀時は少し楽しそうでAも嬉しくなった。
「銀時とA先生は恋人なの?」
「えー! そうなの?!」
「だから”先生”辞めちゃったの?」
次々投げかけられる質問に二人は顔を見合わせた。
回答に困っているAに先に口を開いたのは銀時だった。
「俺がAと居たいから一緒に来たんだ」
それはA本人もまだ聞いたことがなかった銀時の本音。
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アカツキ(プロフ) - 〇〇さん» 初めまして、コメント有難うございます。そのように言って頂けて嬉しいです。パスワードの件ですが、現在全ての作品に置いて鍵の掛かっている作品は非公開とさせて頂いています。公開の予定もパスワードをお教えする事も出来ません。申し訳ありません (4月14日 9時) (レス) id: 7588857b81 (このIDを非表示/違反報告)
〇〇(プロフ) - すごくよかったです 読んでてドキドキしてなんかもう最高でした!! あの質問なんですけどパスワードがかかってる小説あるじゃないですか、その、パスワードって教えていただけますか? (4月14日 7時) (レス) @page44 id: 6c4944cbd5 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 蘆花さん» 初めまして、コメント有難うございます。既に完結の目処も立っておりますので最後まで楽しんで下さると嬉しいです (2023年3月28日 12時) (レス) id: 59cea801ed (このIDを非表示/違反報告)
蘆花(プロフ) - やだステキ応援してます! (2023年3月28日 12時) (レス) @page11 id: bf60b993eb (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 東雲さん» コメントありがとうございます。出会いについてはこれから少しだけ書けたらなと思っておりますので楽しみにして下さると嬉しいです (2023年3月27日 19時) (レス) id: 61673d253f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2023年3月25日 20時