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「なに、これ」
手渡されたのはシワ一つ無い綺麗な茶封筒で、中にはいくらかの金札が入っていた。
確かに今まで熟した依頼分の礼金は貰っていない。
それは俺が「納得いく物が描けたらで良い」と、そう言ったからだ。
つまり、これが手渡されたということは…
「依頼終了...?」
今日も汗が出る程暑い日だというのに、その汗も引いていくような、グラッと視界が揺れる感覚に陥りそうになるのを彼女の言葉が現実に引き戻す。
『いいえ』
「え…? じゃ、これ、なんの金…?」
彼女曰く、『絵が売れた』。
『私も、生活費や画材費があるので… 全額とまではお渡し出来ませんが...』
『人物画がよく売れるんです』
『それも万事屋さんの所で描いたものが結構...』
なんて言ったら良いか分からなかった。
ただ、頭の中では「すげぇな」「どの時に描いたやつ?」「俺達もモデルデビューみてぇなもんじゃん」って。
ぺらぺらと言いたいことが脳内に埋め尽くされていくだけ。
「...依頼は続行?」
『続行です、納得したのは描けてないので』
「そか......、んじゃ、まぁこれは有難く頂くわ」
これは、安堵だろうか。
『...迷惑、でしたか?』
「は?」
『いや、表情が暗かったので』
「そんな事ねぇよ、有難うな」
Aの頭に手を起きひと撫で。
普段神楽相手にやるみたいにそんなことをしてみる。
彼女の艶やかな髪がその手を滑り落とす。
『今度、また甘味でも持ってきますね』
そんなに表情豊かではない彼女の、微かに目を細めて、頬を紅潮させる笑顔の動作が好きだと思う。
「...おう、楽しみにしてるわ」
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アカツキ(プロフ) - 黒猫さん» 黒猫さん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。終わりが見えずグダグダと更新してますがそろそろ本気で終わらせようと思います… (2022年10月26日 7時) (レス) id: 16de2d871f (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 衝撃的な展開! てかお前かい! このモブめo(`ω´ )o (2022年10月24日 22時) (レス) @page21 id: 8c85f5adc6 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 黒猫さん» コメント有難う御座います。もう少し続きますが最後まで楽しんでいただければと思います (2022年8月23日 7時) (レス) id: 5f592be880 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 - 応援してます! (2022年8月22日 21時) (レス) id: 1ec2eca413 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2022年8月21日 17時