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積もっていた雪が溶け始める頃、真選組屯所内は緊迫した空気に包まれていた。
「また煙草を吸う量が増えたんじゃねぇですかィ」
『吸わないとやってられないんだろうね...』
「言わねェんで?」
『あれでも我慢してると思うし』
禁煙効果があってか、一時期、副長室は煙ったくなく非喫煙者の隊士からは高評価を得ていた。
......が、ここに来て彼はまた煙草を吸う量が増えた。
昼食の為、食堂に来ていた沖田は愚痴を零す。
土方は自室に篭っているのか姿は見当たらない。
「お、Aちゃん、丁度良かった!! ちょっと頼まれてくれるか?」
近藤は今から昼食なのか、お盆に乗った丼を片手にAに声を掛ける。
彼から手渡されたのはかなりの量で纏まった書類だった。
『十四郎さんに渡せば良いですか?』
「ごめんね、助かるよ」
『もう戻るところだったので! 近藤さんはごゆっくり』
「ありがとう!!」
隣に座っていた沖田に『大目に見てあげてね』と小声で言い席を立つAに、彼もまた何も言えなくなった。
「......そりゃ狡ィや」
「姉御に言われちゃ、聞かない訳にはいかねぇでしょ」
.
.
.
『十四郎さん、入ってもいいですか?』
「............嗚呼」
地に響くような低い声はまるで飢えた猛獣の呻き声にも似ている。
『近藤さんから書類を預かって来たよ』
『確認お願いします』
「…ったく、重要書類なんだから直接来いよ…」
「悪かったな」
彼の邪魔をしない距離感を保ちながら、Aはそっと土方の横に座った。
渡した書類に目を通す土方の顔を覗き込むと目の下には濃いクマが出来ており、顔色も悪い。
「ンな見られると穴が空く」
『顔色悪いよ、休憩した方が良いんじゃないですか?』
「仕事が残ってんのにか?」
『......じゃ、仕事頑張る十四郎さんに私からプレゼントです』
彼の頭を掴み、向かい合わせにするように動かす。
無理に方向転換したからか「痛ェっ!!」と声を上げる土方を無視しそのまま頭を撫で回した。
「うぉっ、何すんだ...!!」
案の定ボサボサになった頭が一つ。
しかしAは無心で撫でくりまわした後そのまま抱え込む様に己の胸の中へのその頭を抱き締めた。
「......?!?」
突然の出来事と流れに思考が追い付かない土方は最早されるがままだった。
彼自身、このままでいたいと言うのが本音かもしれない。
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アカツキ(プロフ) - -sara-さん» 此方の作品も読んで下さり、そしてコメントまで有難うございます。夢主ちゃんは皆様のご想像の中で存在して欲しいので詳しく設定等は記載しないのですが、sara様の頭に夢主ちゃんが浮かんでくれて嬉しいです! お褒め頂き光栄です、有難うございます (2021年8月16日 8時) (レス) id: 2cb0f29e5d (このIDを非表示/違反報告)
-sara-(プロフ) - こちらにも、こんばんはm(*_ _)mどうやら、私はアカツキ様の土方さんが大好きな様です(笑)元々好きではありましたが、素敵すぎます!あと、ヒロインちゃんも凄く好きです!なんか、映像として頭に浮かんできちゃいます。最後の「猛獣使い」が個人的に大好きです! (2021年8月16日 3時) (レス) id: 7c2d2afbf6 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - あめちゃんさん» コメント有難うございます、無事完結する事が出来てホッとしています。久々に土方落ちを書いた気がしますが、なかなかに楽しかったのでまたいつか出したいですね。応援有難うございました (2021年2月16日 16時) (レス) id: adf8f89573 (このIDを非表示/違反報告)
あめちゃん(プロフ) - アカツキさん» 完結おめでとうございます!!土方さんの良さがすっごいよく表現されていて、いつも読む手が止まりませんでした。私の作品も読んでいてくださりありがとうございます!こちらも頑張ります!改めて、完結おめでとうございます。 (2021年2月16日 15時) (レス) id: beda8b3808 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 東雲 晄さん» コメント有難うございます、途中文章ミスがあり申し訳ありませんでした... ご指摘有難うございました。またご縁がありましたら作品を読んで頂けると嬉しいです (2021年2月16日 7時) (レス) id: 3bd9d4536b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2021年1月25日 23時