【銀魂】その男、獣につき

29. ページ31

　
　
　
　
　
　
　
　
　
朦朧とした意識の中、ひんやりとした感覚に目が覚めた。





　




『と...しろ、さん』

「起こしちまったか」

『おかえりなさい』

「具合はどうだ」



　





長い間眠っていたからか、体の節々が痛くなっている。
モソモソと布団から手を出し土方の冷えた手を握った。





　




『ふふ、冷たい』





「......御前は熱いな...、粥持って来たが食えそうか?」





　




Aは頷き上体を起こす。
土方は卵が混ざった粥を蓮華で掬い上げ、湯気を吹き飛ばす様に息を使って冷ます。





　




「ほら」

『自分で食べれますよ?』

「良いから」

『ん...、はふっ、…おいしい』



　






差し出された蓮華に口を付け、咀嚼する。
出汁が効いている。





　



『ん?!』

「確かに、美味いな」

『馬鹿!! 風邪移りますよ?!』

「そしたら看病してくれよ」



　





不意打ちでキスをしてきた土方に対して、もうさせないと口元を抑えるAだったが今日は唇に触れた感覚が中々消えてくれなかった。


　







.

　





.


　



.


　







「早く治せよ、キスしたくても出来ねぇじゃねぇか」




『したじゃん』





　




粥の入っていた茶碗は見事に完食されていて、Aは再び横になる。
その側で胡座をかき様子を見守る土方。




　





『......しても良いよ』

「.........ｯ!! おま、人が折角我慢してるってのに」

『ふふ、"待て"が出来るようになったんですね』

「言ってくれるじゃねぇか」



　






熱のせいで潤んだ瞳と、火照った赤い顔。
彼女の熱を帯びた手が土方の手首を掴み離さない。


ゴクリ、と生唾を飲む音が土方の喉から聞こえる。



　






「"待て"は十分したからな...?」
「御前が煽ったんだぞ、A」
「......もう待ってやらねぇ」





　





布団を被るAに更に覆い被さる形で乗り上げる。
逃げられないよう彼女の腕を押さえ付けキスの雨を降らせた。

　









『...、もっ、と』







「(普段からこれくらい強請り上手だと良いんだがな)」






　





今だけは2人の荒い息遣いと、口から零れる水温がうるさかったはずの時計の秒針音を掻き消した。









　


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