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「高杉先生、次の手術で使用する麻酔なんですけど......」
「嗚呼、確認済だ、そのまま進めていい」
「分かりました」
高杉は眉間を指でグッと押さえ付け深い溜息を吐いた。
机の上に開かれた資料ファイルを閉じて2回目の溜息。
「潮時か...」
鍵の掛かった引き出しの施錠を解除し中から封筒を取り出した。
そこには達筆で[退職願]と書かれている。
「辞めるのか?」
「...!! ヅラ、手前ェ、気配消して近付くな」
「消してなど居ない、お前が気付かなかっただけだろう」
「だとしてもノックくらいするだろ」
「俺とお前の間柄でそんなもの不要だ!!」
不要では無いから言っているのだが、仕方ない。
高杉は「辞めねェよ」と言い再び引出しに鍵を掛ける。
「お前が辞めてしまったら麻酔科になった意味が無いだろう」
「だから辞めねェよ」
「なら、Aが辞めたら?」
桂の質問には答えず立ち上がり、ファイルを手に持つ。
そのまま部屋を出ていく高杉に今度は桂が溜息を吐いた。
.
.
.
「晋助、貴方はAを支えてあげてください」
「あの子はまだとても弱い」
「先生、そりゃ俺の仕事じゃねぇ」
「アンタの仕事だろ」
「そうですね、では引き継ぎをしましょう」
「私は"仕事"で貴方達を育てた訳では無いですが」
いつか、貴方も"仕事"ではなくそうする日が来る事を願っています。
その言葉に高杉はグッと拳を作り顔を顰めた。
「晋助は彼女が嫌いですか?」
「嫌いではねぇ」
「では好きですか?」
「その二択しかねぇのか」
「無いです」
ハッキリとそう言われてしまい、思わず口を閉じる。
それでもニコニコと笑顔を絶やさない彼には答えずとも高杉の考えてることや気持ちが分かっているのだろう。
「貴方なら大丈夫です」
「晋助なら」
「私が言うのだから間違いありません」
握り拳を作ったままの高杉の手を彼は掴んで両の手で優しく包み込む。
その手があまりに優しくて温かくて、高杉は余計に顔を歪めるのだった。
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アカツキ(プロフ) - 美咲さん» 初めまして、コメント有難うございます。書きたいと思い続けて数年経った医者パロなのでかなり自己満ながらドキドキしつつ書いています。更新速度は気紛れですがお楽しみ頂ければ幸いです (2020年10月17日 21時) (レス) id: cb25f868cb (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 今、私が求めていた医者パロを、ありがとうごさいます!更新頑張ってください! (2020年10月17日 18時) (レス) id: 5f3a224cad (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - Sakuraさん» 今回も早速のコメント有難うございます、お待たせしました...! 何度も考えつつ知識が無いので書かずにいた医者パロ... 不慣れですが温かい目で見守っていただければと思います。よろしくお願いします (2020年10月15日 22時) (レス) id: 5f592be880 (このIDを非表示/違反報告)
Sakura(プロフ) - 新作待ってました…!!!!!病院舞台とか私得でしかないです笑 更新頑張ってください! (2020年10月15日 22時) (レス) id: 321ab1938b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アカツキ | 作成日時:2020年10月15日 22時