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「はー、うま、これマジでうまいな」
ぱくぱくと目にもとまらぬような速さで口と皿とを往復するスプーンを見ながら、私もオムライスを食べ進めていく。
てっぺんに刺さった小さなバラの花を抜いてしまうのが少しもったいないと思いながら、そっと指でつまみあげた。
皿の端にそれを置いて、またオムライスを掬った。
「Aちゃんにお願いして正解やったわ」
「そう？ ありがとう」
たまたまSNSで見かけて、いつか来てみたいと思っていただけだったのだけれど、治くんはとてもご満悦らしい。
そんな彼の様子を見ると、私も嬉しくなる。
絡み合う卵と米とソースを舌の上で存分に転がして、ごくりと嚥下する。
私の皿に残るオムライスが三分の一くらいになったところで、私は既に完食している治くんを見た。
「あのさ、治くん」
「ん？」
水を飲んでいた彼が、視線を私に寄越す。
少し気が引けるのを感じながらも、私は自分の皿を彼の方に差し出した。
「私もう食べられないから、食べない？」
「ええの！？」
「いいも何も、食べてほしいんだけど」
「ほんまか！ やった」
目をキラキラと輝かせた治くんは、空になった彼の皿とオムライスの残る私の皿とを入れ替えて、それはもう嬉しそうにオムライスを口に放りこむ。
利害の一致だ。
私は少食で一人前も食べられないし、彼はよく食べるから一人前では満足出来ない。
特にこんなインスタ映え重視のようなお店だと、彼の胃はろくに満たされないだろう。
私が気になっていたのにいつまでもここに来れなかったのも、一人では食べきれないからだった。
「ごちそうさまでした」
ぱんっと乾いた音を立てて両手を合わせた治くんは、幸せそうな表情を浮かべながらAちゃんありがとうなあ、とつぶやいた。
こちらこそありがとう、と返せば、彼はずいと身を乗り出して私に尋ねる。
「Aちゃん、ほんまに足りるん？」
「足りてるよ、おなかいっぱい」
笑って見せれば、治くんはふうん、と相槌を打って、頬杖をついた。
「ぶりっこ女子の少食アピールとちゃうんか」
「あんなのと一緒くたにされたら泣いちゃうよ」
かわいこぶって少食なんです、なんて言うパリピ女子のせいで、私は少食がコンプレックスなのだ。
私は水を飲んでから背もたれにもたれかかった。
「ちょっとだけ私の話をしてもいい？」
「ええけど、何の話」
「私の食の話」
頷いた彼を見て、私はもう一口水を飲んだ。
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます！よかったです！！！ (2018年12月24日 18時) (
レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです！最後までお付き合いいただきありがとうございました(；；)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います！ (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました！！笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます！お疲れ様でした！そして、書いて下さりありがとうございました！次回作も楽しみにしています！！ (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました！ (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作者ホームページ：https://twitter.com/pp__synd
作成日時：2018年11月4日 17時
