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彼は治くんと私を見比べて、ちょっと興奮気味にまくし立ててくる。
「デートか!? デートやな治!?」
「うっさいわ、電車の中やで」
「これが噂のAちゃんか?」
「……噂になってるんですか」
「治からよーく話聞くで、口を開けばすーぐAちゃんとご飯食べただの」
「侑お前黙らんかシバくぞ」
「なんややんのか」
収拾がつかなくなってきた。双子だからか車内の注目を集めているし、今にも取っ組み合いのけんかを始めてしまいそうな雰囲気で、どうしたものかとあたりを見渡してみる。
運がよかったのかは分からない。
電光掲示板と車内アナウンスが私たちの最寄りを告げていることに気づく。
扉が開いた瞬間、私は治くんの腕を引いた。
「ほら降りるよ!」
「ごめんなAちゃん」
「待って俺もここやから!」
少し申し訳なくなりながらホームに降りると、治くんはツムさん(としか表現のしようがない)の方を睨みながら私を治くんの体の後ろに隠すような位置取りで歩き出した。
「Aちゃんにいらんこと吹き込むなや」
「ええやん、なあAちゃん」
「え、あ」
治くんとツムさんを見比べながら、ただ戸惑った声しか出せない私に、ツムさんは笑った。
「まあコイツすぐ足出るしクソやし食い意地はっとるけど悪い物件やないやろ」
「お前よりかはなポンコツム」
「なんやねん!」
「ほんとのことを言ったまでや」
「腹立つわ! Aちゃんこんなやつと付き合ったりしちゃあかんで! エンゲル係数おかしなるで!」
「経済学部の鳩尾にストレート入れんなやクソ侑!」
ツムさん、さっきと言っていることがひっくり返ってる気がするけれど、それよりなにより。
「なんで私と治くんが付き合う前提みたいになってるんですかっ!」
「えっ、ちゃうんか」
ツムさんの目が点になった。
いやそういう未来があれば私だって嬉しいけど、治くんが私のことを、そんな、
「はいこんな奴置いて二人で帰ろうなー送ってくで」
何も言えない私の腕を引いて、治くんがさっさと歩きだす。
駅の入り口でツムさんは後で覚えとけよなんて捨て台詞を吐いてから反対方向へプンスカと怒ったように大股で歩いて行った。
「ツムさん、あっち行っちゃった、」
「気にせんでええよ、今日あいつ買い物当番なだけやから」
「あ、うん……」
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年11月4日 17時