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それ言っちゃダメなやつだよ、という言葉は言葉になりきれなかった。
意識して避けていたのに、心の中にずっととどめていたのに、こんな形でその言葉が音を持つなんて。

治くんの口から飛び出してきてしまった「デート」という単語に、にわかに私がらしくもなくワンピースなんか着たりしていることを思い出し、つい彼から顔を逸らした。


「……食べられない分を食べてもらってるだけじゃん」


可愛くない返事だ。
可愛くない返事だけど、大学に入ってからデートなんてなかったから、どうしていいかわからないのだ。男友達とご飯くらいなら何度もやってたから、今まで平気だったのに。

デートなんて名前を付けてしまったら、それは。
なんて言い訳を心の中で並べていたのに、次から次へと爆弾を。


「でもAちゃん、甘味は別腹って言うてたし、かき氷一人で完食してたやん」
「ぐうの音も出ません」
「嫌やったか? デートになるの」
「別に嫌なわけじゃ!」


慌てて否定するために顔を上げると、治くんは微笑んだ。私が彼に惚れた時のあのずるい笑みだ。
彼は自分の顔の良さをよくわかっているらしい。

さっきまできらきらした子供みたいな顔でかき氷を頬張っていたくせに、急に大人っぽいちょっと余裕そうな表情なんかしちゃって。


「ほら、デートでええやん」
「……ハイ」


言いくるめられてしまった。
私が作って必死で守っていた「ゼミ同期」の壁を軽々と超えてしまった彼に、どうしていいかわからない。

もう一度俯いてつま先を見つめながら、回らない頭を働かせようとしたけれど、無駄だった。暑さのせいだと思いたかった。


「まあデートいうてもそんな堅苦しいもんやないしなあ」


少しだけ逡巡する間をおいて、治くんはせや! と声を上げた。


「ボーリング行かへん?」


ボーリング。驚いた。確かに、そこまで身構える必要もないかもしれない。

なんだかんだで気の利いた選択肢の提示に安心しつつも、内心ドキドキしていた。
ボーリングとかは普段の遊びみたいな感覚だからデートらしさはないけれど、それでもお互いにこれをデートと認めてしまった以上、私はより一層意識せずにはいられなくなってしまったのだ。


「うん、いいよ」


とはいえ、これ以上の選択肢を私には提示できない。
ちょっとだけワンピースを着てきたことを後悔したけれど、デートだからしょうがないのだということにしよう。

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(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd  
作成日時:2018年11月4日 17時

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