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なんでかはよくわからないけど、去年よりもひたすら忙しかった。
あとからあとからやってくる客に追われてくるくると大忙し。去年や一昨年を経験して勝手がわかっている私はなかなかに重宝されてしまって、朝十時から始まった激務から解放される頃には昼の三時半を回っていた。
「おなかすいた、」
昼も何も食べていないから、すっかり腹ペコだ。
何度も頭を下げてくる後輩を適当にあしらって、私は浴衣の上につけているエプロンのポケットにスマホと前売り券を突っ込んだ。
学部の友人からあれこれと前売り券を買わされて、結構な量溜まっているのだ。
つべこべ言わずに買え、みたいなスタンスで売りつけられたから、正直何の前売り券を持っているか分からない。食べ物系が多くても困るなあと思いながら見たら、思ったよりもスイーツが多くて安心した。
自分が出た教室から一番近いところで前売り消費にホットドッグを買う。
たっぷりのケチャップとマスタードがかかったのをかじりながら、敷地内に所狭しと立ち並ぶあちこちのテントを見回した。一人で回るのは少し寂しいけれど、まあいいだろう。
確か四時半からミスターコンの初日ステージもはじまるはずだし、のんびり前売りを消費すればいい。
そう思いながら、ホットドッグを完食した私はチュロスを引き替える。
浴衣にエプロンという服装なので、ちょっとだけ人目を引いてしまうのが恥ずかしい。知り合いに見つかりやすいから、ほら。
「Aちゃん?」
かけられた声に、振り向く。身長が高くて、多分治くんと同じくらいの、帽子を目深にかぶってマスクをした男の人が立っていた。
あれ、こんな人知り合いにいただろうか、と頭の中を必死に探す。そんな私の様子を見てか、彼は帽子を少し上げて、マスクを外してくれた。
「──ツムさん、」
すぐに帽子とマスクを元に戻した彼は、私の頭のてっぺんからつま先までをじっくりと眺めてから、聞いた。
「えらい着飾って、何の出し物しとるん」
「文芸部カフェB棟二階207教室、よろしくお願いします!」
営業スマイルを貼り付けて宣伝してやったら、ツムさんはちょっと面白そうに笑う。
「ほーん」
「まあ暇があったら来てよ」
「あー、俺今からミスターのステージ出らなあかんねん」
「え、替え玉?」
「あーちゃうちゃう、治のやつ、最後までSNSでは双子ってこと隠しててん、サプライズで双子芸やるから来いって言われて駆り出されとる」
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雛(プロフ) - ネオンガールさん» ありがとうございます!よかったです!!! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - Blueさん» そう言っていただけるとこちらとしても非常に嬉しいです!最後までお付き合いいただきありがとうございました(;;)次回作も鋭意準備中ですので、楽しみにお待ちいただけたらと思います! (2018年12月24日 18時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
ネオンガール(プロフ) - 雛さん» めっちゃキュンキュンしました!!笑 (2018年12月24日 12時) (レス) id: 18c4f82065 (このIDを非表示/違反報告)
Blue - この作品のおかげで治くんがめちゃくちゃ好きになりました。作品の完結おめでとうございます!お疲れ様でした!そして、書いて下さりありがとうございました!次回作も楽しみにしています!! (2018年12月24日 1時) (レス) id: 82a4b13a9b (このIDを非表示/違反報告)
雛(プロフ) - 彩兎さん» コメントと労いのお言葉たいへん嬉しいです。恋愛はもちろんですが、食について掘り下げたお話にしたかったので、少食に共感していただけるとこちらも書いた甲斐があるなと思います。こちらこそ最後までお付き合いいただきありがとうございました! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 7dd974e27d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作者ホームページ:https://twitter.com/pp__synd
作成日時:2018年11月4日 17時